福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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放射能を逃れて
〈『部落解放』2011年11月号〉

 

 故郷の宮崎で「さようなら原発集会」が開かれたので、参加した。そのときに、放射能を逃れて宮崎に避難してきた人たちと意見交換をする機会をもつことができた。「うみがめのたまご」というネットワークをつくり、活動している人たちである。一五家族、子どももいれると、五〇人くらいの人たちが、意見交換会に参加してくれた。
 小さな子どもが遊んでいるなかで、切実な話を聞く。福島県だけではなく、千葉県市川市や東京都などからも避難してきていた。みんなの共通点は、小さな子どもがいることであった。生まれたばかりの小さな赤ちゃんを連れている人もいる。沖縄でも、小さな子どもを守るために避難してきた人たちに会った。
 夫と一緒に家族で避難している人もいれば、母親と子どもが避難し、夫は福島県に残って働いているという人もいた。避難先で仕事が見つかるかどうかわからないので、大変だ。家族全員で避難しても、別居していても、経済的にも精神的にも、子育てもそれこそ大変だ。自主避難については、経済的な支援はなされていない。放射能の被曝は、しないですむならしないほうがいい。いくら政府が大丈夫と言っても、眼の前の子どもを少しでも被曝させたくないという気持ちはよくわかる。いてもたってもいられない気持ちだ。
 落合恵子さんが、クレヨンハウスで七夕の短冊をつるしたときに、「ほうしゃのうこないで」という子どもの短冊があり、子どもにこんなことを言わせる社会を変えなきゃということを話していらした。
 避難した人たちは言う、「避難できないたくさんの人たちが心配だ」と。経済的な事情が許せば、避難したいという幼稚園のママたちの話も聞いた。
 家族のなかでも、大丈夫だという夫と対立したり、地域で孤立したりしている。遠くへ避難しても、とどまっても、ほんとうに辛い状況だという話もそれこそたくさん聞いた。
 それもこれも原発のせいだ。
 故郷から離れなければならなくなった多くの人たち、放射能が高いところで、子どもを育てなければならないストレス、食べ物を食べるたびに心配する。被曝し続ける労働者。海に、山に、大地に、町に、放射性物質が降り続ける。あらゆる命をいま、傷つけている。
 いま、がれきや下水汚泥の焼却灰について「一キロ当たり八〇〇〇べクレル以下」であれば、埋めたててもよいという基準を環境省が出し、全国的に大問題となっている。
 秋田県小坂町は、康楽園という日本最古のまわり舞台がいまも使われている歴史がある町である。いま、そこに廃棄物を大量に埋めるという話が大問題となっている。
 横浜港では、いま、放射性セシウムを含む下水汚泥焼却灰を廃棄物最終処分場に埋めたてるという計画があり、住民の反対で、計画は当面凍結となった。ゴミを埋めたてるというのではなく、一キロ当たり六〇〇〇べクレル以上もあるものを海に投棄し、埋めたてていくのである。近くには倉庫などもある。海面だから、工事中だって放射能がもれるだろう。埋めたてたら、その上に港湾事務所を建てるとも聞いて、さらにびっくり。
 いままでは、セメントや鉄骨として使っていいとされていたクリアランスレベル(基準値)は、一〇〇べクレルだったのである。その法律が成立するときですら、問題だとわたしたちは反対した。それが、原発事故後、八〇倍の基準値になったのである。高すぎる。一〇〇べクレルに戻すべきだ。労働者の被曝限度量にしろ、三月一一日後、はねあがった。
 ひどいものである。それもこれも原発のせいだ。
 戦争と原発は違うけれど、似ている。賛成の人も反対の人もともに巻きこまれ、ひどい目にあう。故郷を奪い、家を奪い、人生を根こそぎ奪っていく。あらゆるものの命を傷つける。被害があまりに甚大で、補償は巨額である。そして、本当の被害の回復などできないのである。そのうえ、原発は未来をさらに傷つける。先日、東京でも鎌田慧さん、落合恵子さんらが呼びかけ、原水禁などの主催で「さようなら原発集会」が開かれ、六万人もの人たちが集まった。人々の力で歴史を変えなくてはと思う。




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