福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

「参議院議員・弁護士 福島みずほのWebsite」はこちら



 

動きはじめた憲法審査会
〈『部落解放』2011年12月号〉

 

 憲法審査会が動きはじめた。衆議院と参議院の両方で憲法審査会の第一回が開かれた。「ついに、とうとう」という思いでいっぱいである。
 憲法改正のための国民投票法は二〇〇七年五月一四日に成立した。二〇一〇年五月一八日から施行となっている。正式名称は「日本国憲法の改正手続に関する法律」である。
 私は、憲法改正をする必要はなく、日本国憲法の憲法価値の実現をこそすべきであると考えている。法の下の平等も幸福追求権も生存権も労働基本権も憲法に書いてあるけれど、現実の社会のなかではまったく不十分。理念を実現するために現実の問題のなかで苦闘せよ、がんばれというのが大事なはずではないか。社会のなかには差別があり、人々の権利は十分に保障されているとはいいがたい。でもだからこそ法の下の平等をはじめ権利実現のために変えていかなきゃと思っている。
 ましてやいまは東日本大震災と原発震災があり、人々の生存権や幸福追求権が侵害されているとき。憲法改正ではなく、憲法価値の実現をこそまさにすべきとき。
 自民党が出している新憲法案は、非常に問題がある。そもそも憲法は、国家権力が人々の人権を勝手に制限しないようにつくられたものである。勝手に課税するなと貴族たちが一二一五年、ジョン王にマグナカルタを突きつけたように、勝手に逮捕するな、表現の自由を検閲などで侵すな、差別的な法制度をつくるなと国家権力を規制するものである。しかし、自民党新憲法案は、人々の権利を制限するあべこべのものとなっている。「権利、権利とばかり言うな。義務をもっと規定せよ」という意見を聞くことがあるが、まさにそのような思いを表している憲法案である。そして、戦争をしないと決めた九条も改正する。九条二項を改正し、日本の「軍隊」が海外で参戦することもできるようになる。いままでの戦後の歴史をひっくり返すような話なのである。
 当たり前だが、すべての法律より上位に憲法がある。だから憲法が変われば、法律が変わり、社会のありようも細部も変わっていく。
 というわけで、憲法改正をするかどうかはもっとも大事なことのひとつといえる。そのことについて議論を始めるのだから、多くの人たちに関心をもってもらい、「暴走」しないようにしっかり歯止めを打っていく必要がある。
 いま衆参に設置された憲法審査会については、法律は次のように定めている。「日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行い、憲法改正原案、日本国憲法に係る改正の発議又は国民投票に関する法律案等を審査するため、各議院に憲法審査会を設ける」
 憲法審査会で、憲法改正原案づくりを始め、衆参の「大連立」で発議をすることが、ある日、急ピッチで進んでいくかもしれない。
 国会は、やりがいのある重要なところだけれど、突然とんでもない法律などがガバァーと「数の力」で通ったりするところだ。油断もスキもありゃしない。そして、いまは衆議院も参議院も、自民党と民主党が手を組めば憲法改正の発議ができるのである。思うに、当たり前だが、戦争はある日突然、始まるのではない。周到に準備されるものだし、「いざ」というときは、第二次世界大戦のときもそうだが、きわめて止めにくくなる。ずーっと手前でみんなで止めなくてはならないのだ。いまがそのときだと思う。
 また、憲法改正のための国民投票法は、多くの問題点をもっている。たとえば、公務員・教育者の地位利用による国民投票運動の禁止である。たとえば大学で憲法の先生が、また学校で先生が「日本国憲法は大事だ」と教えることが、国民投票運動の禁止に触れるとされないか。国民投票運動について、投票日前一四日間はスポットCM禁止だが、それ以外は原則自由とし、マスコミ規制は設けないとしている。原発推進について政官財マスコミの力が大きかった。憲法改正についても、政官財マスコミの多くが改正にむけてフル稼働したら、きわめて大きな力を発揮するだろう。原発にしろ、憲法改正問題にしろ、巨大な力と闘うには人々の力を合わせていくしかない。




「福島みずほの人権いろいろ」index


HOME


JINKEN BOOKは、(株)解放出版社が提供しています。 無断転載を禁じます 。
Copyright (C)Buraku Liberation Publishing House Co.,ltd 2001, All Rights Reserved


E-mail

(株)解放出版社
Phone:06-6581-8542(代表) Fax:06-6581-8552
東京営業所: Phone:03-5213-4771(営業) FAX:03-3230-1600