福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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人権が危ない
〈『部落解放』2012年4月号〉

 

 人権ということについて大きな危惧を日に日に感じるようになった。
 衆議院・参議院で、憲法審査会が動き出した。何人もの議員から次のような発言があった。「日本国憲法は押し付け憲法であり、無効である。現在は大日本帝国憲法下にある」というものである。「えっ、いま裁判所が日本国憲法をもとに判決を下しているのはどうなるの!」と思う。「あなたは、日本国憲法下に生きていきたいか、それとも大日本帝国憲法下に生きていきたいか」と聞かれれば、私は、何としても日本国憲法下で生きたいと思う。大日本帝国憲法下で女性は選挙権も被選挙権も持っていなかった。国会のなかで乱暴な議論が出ているのではないか。
 次に、秘密保全法制定について書きたい。政府における情報保全に関する検討委員会は、二〇一一年一〇月七日、秘密保全法案の通常国会への提出を進めることを決定。この法案の検討は、尖閣諸島沖中国船衝突映像流出事件をきっかけとして起きた。しかし、新たな立法がほんとうに必要なのだろうか。
 秘密保全法制は、国の安全、外交、治安に関し国の存立にかかわるとする情報を「特別秘密」とし、漏らした公務員などに厳罰を科して情報保全を強めるものである。国が新たに「特別秘密」を定め、故意に漏らした公務員などを懲役五年以下か一〇年以下に処する。独立行政法人の職員や民間事業者までも適用の対象となる。問題は、特別秘密が何をさすのか漠然としていることである。しかも秘密の指定は行政機関が行う。情報公開の時代に、なぜ「秘密」の防衛なのだろうか。ますます行政の情報が外に出にくくなる。
 沖縄返還にあたっての米軍用地復元補償費に関する密約問題に関して、情報を漏洩したとされる事務官と記者が国家公務員法違反により有罪判決を受けた。他方、政府は一貫して密約を否定してきた。国会で質問をしたことをよく覚えている。二〇〇二年、アメリカで密約の文書が「発見」された。沖縄返還時に担当の局長であった吉野文六さんにも会いに行った。彼は、当時のことを話してくれ、密約の存在も認めた。しかし、自民党政権下で、予算委員会で質問をしても「確認できません」の一点張りであった。ここまで証拠があるのに日本政府は認めないのかと悔しかったし、怒りを感じた。国民に重要な情報を隠し、暴いたジャーナリストが有罪となり、証拠が明白でも居直るのである。
 二〇一一年一〇月二五日の「琉球新報」は、社説で次のように書いている。「沖縄返還協定に含まれない巨額の「裏負担」は、国会承認を経ずに米国に渡った。民主主義を踏みにじる密約さえも特別秘密として永久に封印できることになる。密約を暴いた記者の取材活動が違法な情報入手例に挙げられていることに情報統制の意図が透ける」と。
 東電福島原発事故でも情報が隠されていて的確に出ないことが数多く指摘された。秘密保全法はいらない。時代錯誤である。
 税と社会保障の一体改革のなかで提起されている「国民総背番号制」も問題だと考える。「マイナンバー」とネーミングしているが、これは国民総背番号制である。住基ネットは、行政の保有するさまざまな情報をマッチングさせないということで成立した。しかし、マイナンバーは、むしろ行政の持っている情報をマッチングし、集中させ、一元化することに意味がある。人々にそれぞれ番号が振られ、その番号を使って行政サービスを受ける。アメリカで起きている「なりすまし」犯罪も多発するのではないか。医療情報、税金の情報などが流出したら大変なことになる。
 さらに、新型インフルエンザ等対策特別措置法案も問題だと考える。緊急事態においては、不要不急の外出の自粛の要請、学校、集会等の制限等の要請及び指示ができる。しかし、集会などの制限を要請するのは、憲法の規定する集会結社の自由との関係で問題ではないか。
 さらに違法ダウンロードに対する刑事罰の導入もこれまた問題があるのではないか。違法ダウンロードはもちろん問題である。しかし、二〇〇六年の調査によれば、違法サイトからのダウンロード数は約二億八七〇〇万ファイル。これをぜんぶ処罰するのか。とにかくもっと議論が必要である。
 かように、人権上の問題はたくさんあるのである。




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