福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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国家による情報管理
〈『部落解放』2012年6月号〉

 

 「昔のピンク・フロイドの録音風景のビデオをネットで見ることができる」。そう言って知人は見せてくれる。「ずーっとピンク・フロイドを追いかけてきたけれど、こんなのがあったんだ」と興奮している。ピンク・フロイドとは、イギリスのロックバンド。
 「違法ダウンロード法案が成立し、ダウンロードしたビデオを見たら処罰されるよね」と言うと、「うーん」と言っている。撮影した人の著作権がある。
また、厳密には、写っている人たちの肖像権がある。それぞれが権利を主張すると、こんな投稿は実は見ることができないことになる。
 いま国会では、違法ダウンロードも処罰する法案が成立しようとしている。
 たしかに、著作権は大事だ。しかし、いままでアップロード(配信)することは処罰されていたけれど、ダウンロードすることは、民事上は違法だが、刑事上は処罰されなかった。ダウンロードすることも処罰することになると、インターネットの世界はどうなってしまうのだろう。
 日本が原発を輸入するときの動きをかつてNHKがドキュメンタリーにした。それを昨年の三月一一日以降、インターネットで見せてもらったことがある。すばらしいドキュメント。しかし、このやり方は、著作権のことでいえば、違法ダウンロードといえなくもない。法案が成立すれば処罰されてしまう。
 いまインターネット上で見ることができる貴重な映像や情報も、何かの投稿であれば、もともとの著作権が問題になることも多いと考えられる。「違法ダウンロードは処罰」となれば、インターネット上は情報が限られてきてしまう。
 また、現在、楽曲の違法ダウンロードは、日本で二億件以上ある。それらがぜんぶ処罰の対象となるとしたら、それはそれで大変だ。
 次にマイナンバー法案について。この法案は、社会保障と税の一体改革の法案として出されている。個人識別番号法案である。国が国民を管理する番号。
 国民総背番号制に対する違和感は、まず次のことからである。
 国会で個人情報保護法案を審議しているときに「政府の内部で各情報は決してマッチングしません」と繰り返し繰り返し答弁がされた。政府の持つ情報がマッチング、統合されれば、強大な監視社会になるからである。そんな議論がされたのは数年前。どうして今回は逆に「情報を統合して便利になる」となるのか。一八〇度変わってしまったのに、そのことについての説明はない。
 また、この膨大な情報が漏洩などしたらどうなるのか。医療情報をはじめ大事な情報はたくさんある。
 さらに、実はこの仕組みをつくっても、資産の把握が十分にできるわけではないことは政府自身も認めている。
 海外に資産を移せばなかなか追跡できないし、すべての取引を透明化し、捕捉しなければ本当の金の動きはわからない。担当者も「この制度ができれば、タンス預金や貸金庫に入れる人が増えるでしょうね」と言う。自分の資産がオープンにならないように、アングラマネーは増えていくことを担当者は認めている。
 個人一人ひとりが国家から一元的に「可視化」される。では、国家のほうはどうか。秘密保全法案が準備されている。かつてのスパイ防止法案より、はるかに秘密の範囲が広く、曖昧である。公務員や取材をするジャーナリストだけでなく、市民も対象になる。刑罰は重罰化している。
 国家は、各個人を一元的に管理し、かかえる情報が公務員やジャーナリストなどの手によって市民に知られないように重罰化する。
 政府の施策は市民からますます不透明になり、市民は国家によって丸裸となる。いまだって、原発の情報はなかなか出てこないし、スピーディの情報はいまだになかなか出てこない。情報は国家のものか、市民のものかと強く言いたい。




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