福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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オスプレイの配備は許されない
〈『部落解放』2012年9月号〉

 

 二〇〇四年八月一三日、米軍の普天間基地所属の大型輸送ヘリコプターが訓練中にコントロールを失い、沖縄国際大学の建物にぶつかって、墜落、炎上した。直後に、沖縄国際大学に行った。建物は損傷と炎などによる被害を受けていた。木々も燃え、汚染土壌も米軍によっていっさい運び出されていたので、異様な光景だった。ヘリコプターの部品などが周辺のマンションの部屋のなかまではいってきていた。民間人に死傷者が出なかったことが救いだったが、惨事には間違いなかった。被害の甚大さに言葉を失うという感じだった。「人口密集地で訓練するな」という怒りでいっぱいだった。結局、この事故は、ねじの緩みといった整備ミスという調査結果が出た。このヘリコプターは、イラクに派兵される前に訓練中のもので、沖縄の米軍ヘリがそのままイラクへ派兵され、戦闘行為に参加しているということもあらためて実感した。沖縄とイラクが地続きである、そんな思いがした。
 だから私がオスプレイ配備を聞いたときに、まず目に浮かんだのは、ヘリコプター事故の現場の惨憺たる風景である。
 全国で米軍機の落下事故、部品の落下事故などが多数発生しているが、沖縄では、大事故が繰り返されている。宮森小学校を米軍のジェット機が直撃したのは一九五九年六月三〇日。パイロットは空中で脱出したが、機体は民家三五棟をなぎ倒したあと、小学校を直撃。死者一七人、負傷者二一〇人、校舎三棟をはじめ民家二七棟などが全焼、校舎二棟と民家八棟が半焼した。すさまじい事故である。この宮森小学校の慰霊祭が行われる六月三〇日に、森本防衛大臣が、沖縄県知事にオスプレイの沖縄への配備を説明に沖縄に行った。沖縄の人たちの「よりによってこんな日に何だ。沖縄の気持ちがまったくわかっていない」という怒りは当然である。
 また、一九七七年、神奈川県厚木基地を離陸したアメリカ海兵隊のファントム機が、エンジン火災を起こして、横浜市緑区(現青葉区)の住宅地に墜落し、周辺の家屋が炎上した。三歳と一歳の子どもが全身火傷により死亡、母親も全身に火傷を負い、闘病生活を繰り返し、事故から四年四カ月後に亡くなってしまった。神奈川県で平和運動にとりくむ人たちは、毎年この事故を追悼し、集会を持ちつづけている。
 いったん事故が起きたら、どれほど人命を傷つけ、悲惨な状況を引き起こすか、私たちはすでに経験しているのである。
 オスプレイは、垂直離発着できる航空機である。離発着時はヘリコプターで、空中でプロペラ機に転換し、大型で多数の兵士を運ぶ。開発段階で四回墜落し、三〇人が死亡している。配備後も二〇一〇年にアフガニスタンで空軍機が墜落。二〇一二年四月にモロッコ、六月にフロリダで墜落し、事故が続いている。ニューメキシコ州ではオスプレイの低空飛行訓練計画に住民から反発が出て、訓練計画が延期されているほどである。
 沖縄県民の九割が普天間基地へのオスプレイ配備に反対するなか、高江への米軍ヘリパッド工事が強行され、オスプレイ訓練飛行の環境づくりが進んでいる。さらに、九州から東北まで本土上空六ルートの低空飛行訓練の計画があり、日本全体がオスプレイの脅威にさらされることになる。
 野田総理は、「米政府が決めることで日本政府がどうこう言える話じゃない」と言っているが、冗談ではない。国民の命と生活を守ることこそ政治の仕事ではないか。米政府に対して、どうこう言わなくてはならないときである。
 原発再稼働とオスプレイ配備は似ている。どんなに多くの人が命の観点から反対しても、政権は聞く耳を持たないのである。「事故が起きたらどうする」「もう二度と事故を起こしてはならない」という人々の切なる思いをなぜ聞かないのか。事故が起きたら取り返しがつかないのである。
 消費税増税もやったもん勝ち、三党の多数決でごり押しをしていくということも、これまたきわめて大問題である。民主主義を多数決としか思っていない。民主主義は、対話であるはずなのだ。主権者である国民の声を生かす政治を取り戻したい。




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