福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

「参議院議員・弁護士 福島みずほのWebsite」はこちら



 

原子力規制委員会の人事
〈『部落解放』2012年10月号〉

 

 毎週金曜日の一八時から、可能なかぎり、官邸前の反原発の抗議行動に参加している。シュプレヒコールのメッセージはずーっと「再稼動反対」だったが、ここ一カ月以上は、「再稼動反対」と同時に「原子力規制委員会人事案反対」になっている。
 そうなのだ。原子力規制委員会の委員の人事案が大問題なのだ。
 そもそも、原発を推進するところと規制するところは別々であるべきなのだ。いままで、経済産業省と資源エネルギー庁と保安院はまったく同じ代表番号であった。保安院は、原発を規制するところであったはずだが、推進の役割を果たしてきた。福島東電原発事故を経て、まともな規制委員会をつくるというのが、重要な課題になったのである。
 しかし、どうだろうか。原子力規制委員会設置法が成立し、委員長と委員の人事案が内閣から提案された。しかし、これが大問題なのだ。原発の規制というのであれば、〈三月一一日〉より前から、原発の危険性について警鐘を乱打していた人であるべきだ。固い信念がなければ、経済産業省、財務省、電力会社、経済界とは闘えない。
 提案された五人の人たちは、原発の危険性を言って行動してきた人は、一人もいない。原子力ムラに訣別しなければやっていけないのに、原子力ムラの住人の人たちである。
 委員長候補の田中俊一さんは、日本原子力研究所副理事長、原子力委員会委員長代理、原子力学会会長を歴任。さらに、田中さんは、原子力損害賠償紛争審査会において、「政府が避難の基準としている二〇ミリシーベルトをゆるがすべきではない」として、最後まで自主的避難者に対して賠償するべきではないと、がんばった人なのである。
 細野大臣は、わたしの質問に対して、六月一八日の参議院の環境委員会で、「原子力ムラから選ばないということであれば、それはもちろん大前提として心掛けていかなければならないところだというふうに思います」と述べていたのであるから、原子力ムラの人を選んではいけないのである。
 さらに、原子力規制委員会設置法七条七項三号は、原子炉事業者の従業員はだめであると規定している。更田豊志さん、中村佳代子さんは、明確にこれにあたるのではないか。
 これについて八月二四日、政府は文書で回答。「規制の対象となる事業者としては、更田豊志氏が所属している独立行政法人日本原子力研究開発機構が該当しますが、同氏は委員に就任するに当たり、辞職することとしておられるので、同法に違反することはありません」
 つまり、事業者にはあたるが、委員になるときには辞めているからいいのだというのである。これはむちゃくちゃな論理。これでは、東電や関電の社長でも、委員になるときには会社を辞めているからいいのだという理屈になる。これではどこが、原子力ムラから訣別して原発を規制することになるのだ。会社を辞めればいいというのであれば、委員になれない人など、この地球上でいなくなってしまう。
 細野大臣は、七月三日の記者会見で、「就任前、直近三年間に原子力事業者等、及びその団体の役員、従業員等であった者。これは委員として欠格要件にあたるとそういうことです」と明言している。この条件に更田さんも中村さんもあたる。自分が言った基準にすら反しているではないか。
 委員会は、原発の許可や再稼動、廃炉、防災の避難の範囲も全部決める。委員長は、五年間居座ることができる。人事案は国会同意人事で決まってしまうかもしれないが、最後まで撤回せよと多くの人とがんばるつもりだ。わたしには、この人事は、原発を推進するぞという政府の、反原発への宣戦布告のように思えてならない。
 脱原発を実現するために一つひとつがんばっていこう。




「福島みずほの人権いろいろ」index


HOME


JINKEN BOOKは、(株)解放出版社が提供しています。 無断転載を禁じます 。
Copyright (C)Buraku Liberation Publishing House Co.,ltd 2001, All Rights Reserved


E-mail

(株)解放出版社
Phone:06-6581-8542(代表) Fax:06-6581-8552
東京営業所: Phone:03-5213-4771(営業) FAX:03-3230-1600