福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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ねらわれる憲法9条
〈『部落解放』2013年2月号〉

 

 選挙が終わって、脱原発も憲法も人権も正念場である。
 原発についていえば、活断層の調査などを全国の原発でやるように規制委員会に要望し、原発が再稼働されないようにしていく必要がある。原発の新増設、青森県の大間原発や山口県の上関原発の建設を許さないことも大事である。全国各地で、自然エネルギーを促進し、雇用をつくっていくこともやっていきたい。
 ところで、安倍総理は、以前、総理大臣のときに教育基本法を改悪した。今回の衆議院選挙の「自民党政策BANK」には、「教育基本法が改正され、新しい学習指導要領が定められましたが、いまだに自虐史観や偏向した記述の教科書が多くあります。子供たちが日本の伝統文化に誇りを持てる内容の教科書で学べるよう、教科書検定基準を抜本的に改善」としている。今後、教科書の内容についての介入が行われるのではないか。歴史認識も含めて、私たちはどう考えるのかとことん議論し、共有し、政権の教科書への介入などと闘っていかなければならないのではないか。
 国会では、安倍総理のときに成立した憲法改正のための国民投票法にもとづいて、衆議院と参議院に憲法審査会が設置され、議論が続いている。この憲法審査会が改憲の踏み台になっていくのではないか。憲法改正のターゲットは、何といっても戦争をしないと定めた憲法九条である。自民党が二〇一二年四月二七日に出した日本国憲法改正草案は、九条の二の第一項に「国防軍を保持する」とし、第三項で「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる」としている。戦闘行為をすることを違憲としないだけでなく、国防軍は世界で活動、つまり、戦闘行為ができるようになるのである。戦争をしない国から戦争をする国へ、戦後六七年間の破壊である。
 憲法九条がターゲットであるが、まずやろうとしていることは、九六条、つまり改憲手続きの改憲である。日本国憲法は、憲法を改正するには「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し」となっていて、三分の二以上の賛成による発議が必要である。この九六条の改正要件を過半数の賛成でよいとするのが自民党の改憲案である。維新の会も公約でこのことを掲げている。みんなの党の代表も賛成している。
 たかだか憲法改正の手続き、改憲の要件ではないかというなかれ。まず、国会の各議院の過半数で発議できるとして、堤防を低くして、堤防の上を波が越えられるようにしているのである。あるいは、堤防決壊である。憲法は最高法規であり、憲法を変えると法制度もぜんぶ変わってしまう。法律を変えるのとは、重要性もまったく違う。時の政府の思惑で、つまり、法律と同じ過半数の要件で、憲法改正の発議ができたら、たまったものではない。憲法改正をやりやすくして、憲法九条改正のタイミングをはかり、過半数で、つまり与党の数だけで、発議をしようとしているのである。
 社会党が国会の中で三分の一以上を占めているときは、憲法改正の発議はできなかった。「改正要件を簡素化するだけで、大したことではない」として、過半数で改憲できるよう憲法改正し、ベストのタイミングで、過半数で発議し、九条を変えようとしている。
 自民党の憲法改正草案には、ほかにもさまざまな問題がある。「国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない」としている。「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」としている。逆にいうと、国民の基本的人権は、公益及び公の秩序という広範囲な基準で、制限できるのである。公益や公の秩序というあいまいな、どうとでも解釈できる基準によって、結社の自由なども制限されるのである。
 世界で、日本の国防軍がアメリカ軍とともに戦争することを私たちは望むのかということが問われ、人権が輝く社会をつくりつづけることができるのかが問われている。




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