福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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ダンスを風営法から削除すべき
〈『部落解放』2013年3月号〉

 

 事務所にヒップホップダンサーの人たちが来て話をしてくれた。一人は、昔からよく知っている知人の息子さんである。一歳だった彼がこんなに大人になったのかと驚いたが、ヒップホップダンサーとしてがんばっている。知り合いの子どもたちがダンスを生業としているということが増えてきた。ダンスの社会に占める位置も大きく広がってきた。
 ヒップホップダンサーの人たちが来た理由は、夜一二時を過ぎると、クラブでダンスができないことになっていることについてである。DJ(ディスクジョッキー)の音楽に合わせて客が踊る「クラブ」と呼ばれる店舗が、風営法違反で摘発されることが続いている。風俗営業法は「客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業」を規制対象とし、許可が必要。しかし、許可をとると、風営法の規定で原則、夜の一二時までしか営業ができない。店が六六平方メートル以上ないと免許がとれないので、小さなクラブはそもそも許可の申請ができない。夜一二時以降に営業できないこともあり、「無許可営業」や「時間外営業」が常態化し、警察も事実上黙認してきた。しかし、事件が発生したことから、大阪、京都、福岡、東京で取り締まりが相次ぎ、サルサバーの老舗なども閉店してしまった。
 二〇一二年四月からダンスは中学校保健体育の必修科目となった。ダンスはどんどん身近なものとなっている。にもかかわらず、いまだにダンスが風俗営業の規制の対象とされているのは問題ではないか。
 二〇一二年一一月二七日の朝日新聞によると、ある市は、「資格のある指導者を置かずに、会費を集めて社交ダンスパーティーを開くと風営法の規制対象になるとして、公的な施設を貸し出す際に注意するよう担当部署に通知した」そうだ。「警察署に確認すると、『たとえ三〇〇円でも会費を集めたら営業行為として規制対象になる場合がある』という趣旨の回答を得たという」。これにはびっくりした。中高年の社交ダンスパーティーは花盛り。健康にも精神的にもいいし、病気予防にもなる。中高年のダンスの楽しみを奪うなと言いたくなる。ある市の海水浴場でのベリーダンス教室の発表会も認められなかった。こうなると変ではないか。
 一九四八年に「風俗営業取締法」(旧法)が制定されたときには、買売春を取り締まることを目的として、ダンスをさせる営業を規制の対象とした。しかし、そのことは、今の時代に合っていないのではないか。
 また、規制されるダンスとは何かについても矛盾がある。二〇一二年一二月一七日の警察庁のダンスについての解釈の通達は、ダンス教室などの四号営業について「男女間の享楽的な雰囲気が過度にわたる可能性」があるとして、男女がペアで踊るダンスを規制対象とするとし、ヒップホップダンスや盆踊りは規制対象としないとした。ところが、通達は、クラブなど客に飲食をさせる三号営業では、ペアダンス以外のダンスであっても「規制を行い、各種弊害を防止する必要がある」とした。条文上は同じ「ダンス」なのに、なぜ解釈を異にし、一人で踊るものもダメなのか、わからない。ところで、「男女間の享楽的な雰囲気が過度にわたる可能性」っていったい何だろう? ペアダンスに対する偏見ではないか。そもそも、少しは享楽的でなければ楽しくないかもしれないではないか。健全なペアダンスが大半だろうが、タンゴなど色っぽくて楽しいではないか(私は踊れないが)。
 それに、と思う。徳島の阿波踊り、沖縄での踊りなど、みんなが踊り出すことはよくある。沖縄では、パーティーなどの最後は、みんなが自然発生的に踊り出すなんてことを経験してきた。もちろん沖縄以外でも、バーなどで踊り出す人もいる。こういうのも規制するのか。おかしい。
 ライブハウスやカラオケボックスは風営法の規制からはずれている。ダンス教室は、ペアダンスということで風営法で規制され、クラブは、飲食とダンスの組み合わせということで、一人で踊るのもヒップホップダンスも風営法で規制される。ダンスに対する偏見であり、戦後のダンスホールで買売春のきっかけがつくられたこともあることを引きずっているだけではないか。犯罪の予防は、予防としてすればいい。風営法からダンスを削除すべきではないか。




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