福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

「参議院議員・弁護士 福島みずほのWebsite」はこちら



 

若者を使い捨てるな
〈『部落解放』2013年4月号〉

 

 先日発表された毎月の給料の額は、三一万四二三六円、過去最低になった。非正規雇用の割合は三五パーセントで、これまた最高の数字となった。最近、非正規雇用は三分の一といわれてきたが、三分の一を超えてしまっている。女性の非正規雇用率は、五四・五パーセント。これまた半分をはるかに超えている。労働条件は、かつてないほど悪くなっている。
 フルタイムで働く女性の月額賃金が過去最高になった。しかし、二三万三一〇〇円。これで最高とは、どういうことか。しかもフルタイムで働く人たちであって、五四パーセントを占める非正規雇用の人たちの月額賃金は含まれていない。ちなみに男性は、三二万九〇〇〇円。やはり男女格差がある。
 就活が理由で自殺をした若い人たちの問題を国会で採り上げたことがある。就職するのが大変だが、就職してからも大変ということを痛感するようになった。
 事務所にボランティアに来てくれた若者や知り合った若者が悩みを語りにやってくる。「仕事を辞めたい」と。私ははじめは、最近の若者は根性がなく、ちょっと嫌なことがあったら辞めるというのではないかと少し思っていたが、細かく聞いていくと明らかに違う。IT企業などに就職して、いわゆる使い捨てにされているのではないかと思うようになった。サービス残業は多く、知り合いにその会社のクレジットカードを作らせるようノルマを課されるなど。
 いずれも大卒で、その会社から見て明らかに幹部候補生。その彼らが明らかに使い捨てにされている。私は、はじめお母さんのように、「社会のなかでは苦労も多く、仕事ってたやすいものではなく、給料もらっているんだから、がんばって働き続けたほうがいいと思うよ」と言うつもりだったが、相談を受けているうちに、「明らかに会社のほうがおかしい、無理して働き続けているうちに心身ともに壊されていく」と思うようになった。いま若者たちは、大学に行き直して、資格を取ろうとしたり、別の会社で働きはじめている。
 NPO法人POSSE代表の近野晴貴さんと去年対談をした。一五〇〇人からの労働相談のなかで、若者を使い捨てる「ブラック企業」の存在や問題点が見えてきたという。大量に採用し、大量に使い捨てをする。違法な労働条件で若者を働かせ、人格が崩壊するまで使いつぶすのが「ブラック企業」である。あまりの長時間労働に、サービス残業。過酷な労働条件のなかでうつ病になっていく若者も多い。以前は、大企業であれ、中小企業であれ、「うちの新人」「うちの会社に就職した子」として、教育をし、研修をし、育てていくという風土が少しはあったのではないか。しかし、いまはそんな時間的余裕はないし、「代わりはいくらでもいる」のである。
 正社員として就職するのが大変で、多くの若者は就活に苦しんでいる。パート・派遣・契約社員は、若者と女性では働く人の半分を占め、会社の側は、使い捨てをしても、新しい人を入れればいいという感覚なのではないだろうか。
 しかし、当たり前だが、人は物ではなく、生きている人間なので、心身を壊されていく。
 外食チェーン店の店長をしていた夫が過労の末亡くなってしまったので、労災の申請をし、そのお金で「龍基金」という基金をつくり、過労死を少しでもなくそうと取り組んでいる女性がいる。毎年、過労死や労働問題に取り組んできた人を表彰している。昨年表彰されたのは、外食チェーン店に入社して働いていたが、心身ともに疲れ、入社して数カ月後、寮から飛び降り自殺をしてしまった女性のご両親だった。労災を認めさせたのである。しかし、表彰式でのご両親のお顔からは、悲しみや無念が伝わってきた。私は、時間がなくて、直接お話を聞くことができずに会場を後にしたが、労働条件にメスを入れなければ、大変なことになると痛感した。
 人は働かなければ、食べていけない。生計を立てることができない。しかし、その働く場で、心身がまいってしまうような、壊されていくようなことは間違っている。ブラック企業をなくすぞと決意しているところである。




「福島みずほの人権いろいろ」index


HOME


JINKEN BOOKは、(株)解放出版社が提供しています。 無断転載を禁じます 。
Copyright (C)Buraku Liberation Publishing House Co.,ltd 2001, All Rights Reserved


E-mail

(株)解放出版社
Phone:06-6581-8542(代表) Fax:06-6581-8552
東京営業所: Phone:03-5213-4771(営業) FAX:03-3230-1600