福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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声を上げよう
〈『部落解放』2013年5月号〉

 

 二〇一三年一月二七日に、日比谷野外音楽堂でオスプレイの反対集会があった。沖縄の自治体の首長さんたち、議員のみなさんが、壇上で訴え、日比谷野外音楽堂も市民でいっぱいだった。
 あとで、デモに参加した人たちから話を聞いた。沖縄の人たちに対して「売国奴」という罵声が浴びせられ、首長さんたちが怒っていたという話も聞いた。「売国奴」という言葉に耳を疑った。首長さんたちは超党派で、もちろん自民党の人たちもいる。なぜ沖縄にオスプレイを配備するのか、危険ではないかということからみなさん反対し、参加をしている。危険だと思うオスプレイの配備と低空飛行訓練に反対することが、なぜ「売国奴」になるのか。
 全国で〇・六%の面積のところに七五%の米軍基地が集中していることについては、政府ですらも「沖縄の県民の負担軽減」と言っている。私は、沖縄に海兵隊を置くことが抑止力になっているかどうか、沖縄の辺野古沖に海上基地を造ることの是非については、国民のなかに意見の違いがあっても、日常的に爆音にさらされ、危険と隣り合わせに生きている沖縄の人たちに対して「売国奴」という言葉が投げつけられることは、想像もしていなかった。
 社会が、大きく変わりつつあるのではないか。それは大変なことではないか。
 二月一七日、新大久保で約一〇〇人の人たちがプラカードを掲げデモをしたことが報じられている。プラカードの言葉に「善い韓国人も悪い韓国人もどちらも殺せ」「朝鮮人首吊レ毒飲メ飛ビ降リロ」とあったと報じられている。他方、デモのかたわらでは、「仲良くしようぜ」というボードを掲げ、アピールをしていた人たちがいたというのは救いである。
 一〇〇人が多いか少ないか。しかし、問題は、「どちらも殺せ」「朝鮮人首吊レ」というプラカードを掲げられる社会に私たちが生きているということである。
 当事者たちはどのような思いでこれらのプラカードを見ているのだろうか。身の危険や圧迫を感じている人も多いのではないか。
 第二次世界大戦中、ドイツなどで、ユダヤ人の人たちが強制収容所に入れられていることを、人々はどのような思いで見ていたのだろうか。「白バラの祈り」という映画を見たことがある。ミュンヘンの反戦グループの大学生ハンスやゾフィーが、「戦争反対」などと書いたチラシをまいたことで、逮捕され、国家反逆罪で裁かれる。ハンスは、医学部生として戦争に従軍し、戦争の実相がわかっていたのである。被告人たちは叫ぶ。「ユダヤ人を虐待したくせに」と。裁判長が制止し、叫ぶ。「そんなことはデマだ」と。
 排外主義や迫害が起き、エスカレートしていくときに、少なくない人々は、それを知りながら、見逃していく。そのことがとんでもないことをよびよせるのだ。
 ポーランドのアウシュビッツに行き、オランダでアンネ・フランクの隠れ家に行き、そこで生きていた人たち、最後は殺された、あるいは亡くなった人たちのことを思った。
 アメリカでも第二次世界大戦中、日系アメリカ人は、「敵性スパイ」ということで強制収容所に送られ、多くのものを失った。私の親類のなかにも入れられた人がいると聞いている。ナショナリズムが高揚されるとき、国と国とが戦争をしたり、緊張関係が高まると、排外主義がひどくなる。外国人や障がいのある人、マイノリティなどが迫害される。
 自分のことだと思わずに、人ごとだと思っていると、いつか自分の首も絞められていくのではないか。自分たちの権利も奪われ、声を上げられなくなるのではないか。
 いじめと一緒で、いじめられる側にまわりたくなくて、「見て見ぬ振り」「仕方ない」「怖い」「私には関係ない」「どうしようもない」「いじめられたくない」と思っているうちに、自分も含めてとんでもない目にあうのである。あるいは取り返しのつかないことも起きるのである。今はとにかく「おかしいことはおかしい」と声を上げよう。




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