福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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橋下市長の慰安婦発言を問う
〈『部落解放』2013年7月号〉

 

 橋下徹大阪市長が、「銃弾が雨嵐のごとく飛び交う中で命かけて走っていくときに、どこかで休息させてあげようと思ったら、慰安婦制度は必要なのは誰だってわかる」「沖縄の海兵隊の司令官に、風俗業を活用してと言った。もっと活用してもらわないと、性的なエネルギーをコントロールできない」と発言した。風俗業の活用についての発言は撤回したが、慰安婦制度は必要だという発言については、まだ、撤回していない。現在は、「『戦時においては』『世界各国の軍が』女性を必要としていたのではないかと発言したところ、『私自身が』必要と考える、『私が』容認していると誤報されてしまった」と弁解しているが、これは詭弁ではないだろうか。「誰だってわかる」という「誰」のなかに「私本人」も含まれるからである。慰安婦制度は必要なのは私も含めた誰だってわかるという発言をしておいて、私は容認していないとどうして言えるのだろうか。
 戦争という非人間的な行為のなかで、兵士たちは異常な精神状態、状況に置かれる。だからこそ私は、戦争反対なのである。多くの人が戦争反対なのである。そして、兵士がいかに非人間的な状況に置かれようと、なぜ女性たちを性の道具として扱うことが正当化されるのか。女性たちは生身の人間であり、なぜ男性たちの性の解消のために使われなければならないのか。当時、必要だったと言うことは、女性の人権を踏みにじってもよかったのだと公言することに等しいと考える。そして、当事者や女性の人権を侵害するだけでなく、男性とはそういうものということで、男性の人権も侵害している。
 五月二二日、市民、とりわけ多くの女性たちが、議員会館で集会を開いた。そのとき、沖縄の高里鈴代さんから「強姦神話」を打ち砕こうというメッセージが寄せられた。そのとおりである。思うに、橋下さんの発言の根底には、「男性の性欲は抑えがたいものである」というものがあり、だから米軍は「風俗業を活用して」「慰安婦制度は必要」という発言になるのではないか。
 長い間、セクシュアル・ハラスメントや強姦は、女性の服装や態度が問題とされ、「そんな服装をしているからだ」「夜道をそんな格好で歩いていたからだ」と非難されてきた。チカンについても、女性の服装などが責められてきたことがある。「強姦神話」の一種であり、女も誘って、喜んでいたと言われかねない状況もあった。
 男性の性欲の解消のために、風俗業の活用や慰安婦制度が必要だったと言うことは、男性の性欲の解消のために、女性を踏みにじることを肯定するものであり、女性の人権についてまったく考えていないと言わざるを得ない。
 「ドイツ・青ざめた母」という映画を見たときに、良き夫であったドイツの男性が、第二次世界大戦中、買春をすることができなくて、部隊のなかで大きなからかいの対象になるというシーンがあった。買春すらできない男は弱虫というわけだ。
 橋下市長の発言においても「男はこういうもの」というステレオタイプの決めつけがあり、だから女性を「手段」にしても許されるという論理になっているのではないか。私が、女性差別であると同時に男性の人権も侵害していると書いたのは、そういう意味である。
 ところで、維新の会の石原慎太郎さん、西村真悟さんの発言も、問題である。しかし、これらの発言が出てきた土壌は、安倍内閣のもとで総理が歴史認識をゆるがせ、かつ、自民党が、日本国憲法を改正する草案を発表し、九六条を改正し、九条を改正し、国防軍を作り、交戦権を認めるとしていることにあるのではないか。政権のなかにこそ問題があるのではないか。
 国連の社会権規約委員会は、五月二一日、日本で起きているヘイト・スピーチ(憎悪表現)に対して、日本政府が対応するよう求めた。放置せず、政府はしっかり対処すべきである。
 ヘイト・スピーチや公人の差別発言が許容される社会のなかで、差別や排除や迫害がエスカレートしていくのではないかと大きな危機感をもっている。憲法改悪と戦争への道を阻止しなければならない。




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