福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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この社会を変えなければ
〈『部落解放』2013年8月号〉

 

 自民党の高市政調会長が、原発再稼働問題について、「東京電力福島第一原発で事故が起きたが、それによって死亡者が出ている状況ではない。最大限の安全性を確保しながら活用するしかない」「原発を利用しないというのは無責任な気がする」と述べたと報じられた。撤回と謝罪をしたが、それで済む問題ではない。
 原発震災から逃れて避難をした先で、体調を悪くして亡くなられた高齢者の人たちがいる。『プロメテウスの罠』という本のなかには、三月一一日以降、しばらく生きていらしたが、その後、餓死をしたと考えられる人の話が載っている。原発事故のため強制避難命令が出て避難をしなければならず、だれも助けに行けなかったのである。浪江町でも「助けに行けなかった」という話が出ていると聞いている。助けることができた命があったかもしれないのに、助けることができなかったのである。原発事故で亡くなった人はいないというのは、無神経な、またまったく事実をねじまげる発言である。
 また、原発事故は収束していない。事故原因も明らかではない。原子力規制委員長も予算委員会で、そのことを認めている。事故原因が明らかでないのに、なぜ新規制基準を作ることができるのか。原子力規制委員会が作った新規制基準は、七月八日に施行される。各電力会社から再稼働の申請がされ、再稼働が進むのではないか。総理は、「一〇年かけてエネルギーのベストミックスを考える」と言うが、実態はバリバリの原発推進、原発再稼働でしかない。
 安倍内閣は、原発輸出にも邁進している。民主党政権時代に決めたベトナム、いまの内閣のもとでインド、トルコ、東欧に原発を輸出しようとしている。福島東電原発事故が収束せず、いまだに一七万人以上の人たちが避難生活をしているなかで、なぜ「世界一安全な原発を輸出する」と言えるのだろうか。ベトナムは、枯葉剤に苦しみ、まだ原発はない。トルコは地震大国。いままで地震で多くの人が亡くなっている。先日、議員会館で、インドとトルコの状況を共有し、原発輸出に反対する市民集会があった。インドもトルコも長年、多くの人の原発反対運動がある。これを押し切って、日本は原発輸出をするのか。日本は世界の加害者になってはならないと痛切に思う。原発事故が起き、放射性物質が拡散してしまったら、それを元に戻す方法はないのだ。
 福島東電原発事故から私たちはもっともっと学び、世界を変えなければならない。ところが、日本のなかの「原子力ムラ」は、日本での原発の新規建設がなかなか進まないだろうと予測し、いまや世界をめざし、世界の原子力ムラになろうとしているように思える。
 ところで、前述した市民集会の題は、「倫理なき原発輸出に反対」であった。「倫理」といえば、ドイツが開催した「倫理委員会」を思い出す。福島東電原発事故直後の二〇一一年四月四日から五月二八日まで、ドイツのメルケル首相の委託により設置された委員会の通称が「倫理委員会」。哲学者や宗教者も入れて、委員による非公開の議論とテレビ中継による公開の議論を経て、報告書『ドイツのエネルギー転換―未来のための共同事業』を提出。ドイツは、脱原発をあらためて選択した。使用済み核燃料をどう処分し、一〇万年以上も管理しつづけることができるのかが大問題とされた。原発のエネルギーは倫理的でないとされたわけだ。
 福島東電原発事故を世界は経験し、そのことに衝撃を受け、ドイツはいち早く脱原発の方向をあらためて確認した。日本の社会も人々の意識も変わったと思う。しかし、政府や財界などの行動や意識は変わっていない。自民党などの意識も変わっておらず、復興庁の水野参事官の暴言ツイートなど、子ども・被災者支援法を作り、とりわけ子どもたちの命を心配して取り組んでいる人たちを冒リヲするものだ。しかし、これは彼個人の問題ではない。復興庁は、法律成立後一年以上経っても、法の要求する基本方針すら作っていないのだ。
 CIA元職員のスノーデンさんは、アメリカ政府による極秘の情報収集を暴露した。動機について「この社会は変わらなければならない」と言った。そのとおりだ。原発のことも、この政府の情報の収集のことも、私たちは力を合わせて、この社会を変えなければならない。




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