福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

「参議院議員・弁護士 福島みずほのWebsite」はこちら



 

集団的自衛権容認の動き
〈『部落解放』2013年9月号〉

 

 自民党は、憲法改正を今回の参議院選挙の公約に掲げた。すでに自民党は、二〇一二年四月、日本国憲法改正草案を発表している。憲法九条を変えて、自衛隊を国防軍とし、集団的自衛権を認めるなかみである。集団的自衛権は、同盟国などが攻撃されたときに自国への攻撃とみなし、共同して対処する権利である。外国の軍隊が攻めてきたら、日本国憲法下で、応戦することは可能である。一般的に、日本国憲法下でも、個別的自衛権は行使することができる。問題は、集団的自衛権である。集団的自衛権というとややこしいかもしれないが、わかりやすく言うと、外国で、日本の国防軍が、外国の軍隊と戦争をすることである。もっとわかりやすく言うと、アメリカ軍とともに世界で戦争をすることである。
 安倍総理は、参議院選挙の終わりのころ、憲法九条の改正に意欲を示した。私は、自民党日本国憲法改正草案は、基本的人権を「公益及び公の秩序」で制限できることがとりわけ大問題だと思うが、「戦後レジームからの脱却」を謳う総理にとっては、「戦後レジーム」とは日本国憲法のことであり、憲法九条のことである。戦争をしない国から戦争のできる国へ。「日本を取り戻す」とは、「戦争のできる日本を取り戻す」ということではないか。
 こんな明文改憲は大問題だが、この秋、安倍内閣は、解釈改憲で集団的自衛権を認めることに突き進みそうである。総理は七月二二日、集団的自衛権の行使容認にむけた議論を八月にも再開し、関連法の整備を政府提出で行う意向も示した。これは大問題である。日本国憲法下で、集団的自衛権の行使はできない。海外で戦争はできない。日本の若者は、海外で、戦争で人を殺すことはできないのである。それが、なぜ行使できるのか。憲法違反のことを内閣が認め、行うことは許されない。これは大変なことである。
 二〇一三年五月一四日、参議院の予算委員会で質問をした。「内閣法制局、日本国憲法下で集団的自衛権の行使は認められますか」と聞いた。内閣法制局長官の答えは次のようなものである。
 「集団的自衛権についての現在の従来から考えられてきた政府の見解を申し上げますと、憲法九条の下におきましては、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に、これを排除するための必要最小限度の実力の行使を除いて、武力の行使は一般に禁じられております。そこで、集団的自衛権ですけれども、我が国に対する武力攻撃に対処するものではなくて、他国に加えられた武力攻撃を我が国が実力をもって阻止することを内容とするものでありますから、その行使は憲法九条の観点で許されないということでございます」
 ここまではっきり、憲法九条に反して違憲と言っているのに、自民党は、解釈で認め、かつ、秋の国会に国家安全保障基本法案を提出しようとしている。これは集団的自衛権を認めるなかみである。政府提案とするためには、内閣法制局の審査をクリアしなければならない。しかし、それは通らないので、自民党は議員立法で出すといわれてきた。ところが、総理は政府提案立法でやると意欲的。内閣法制局の見解を変えさせるのだろうか。それはそれで大問題である。違憲と言いつづけてきたことを合憲とすることなどできない。
 ところで、石破茂幹事長は、二〇〇二年五月二三日の衆議院の憲法審査会において次のように述べた。「日本の国において、徴兵制は憲法違反だと言ってはばからない人がいますが、そんな議論は世界じゅうどこにもないだろうと私は思っています。……徴兵制は憲法違反、なぜですかと聞くと、意に反した奴隷的苦役だからだと。国を守ることが意に反した奴隷的苦役だというような国は、私は、国家の名に値しないのだと思っています」。日本国憲法下で徴兵制は合憲という考え方だが、日本国憲法は交戦権を認めないのだから、徴兵制は違憲である。
 自民党は、国家安全保障基本法で、違憲の集団的自衛権の行使を認め、憲法九六条の改憲手続きを緩和し、「すでに集団的自衛権を行使しているでしょう。憲法九条を変えるしかない」というプログラムで突っ走るのだろう。戦争と憲法改悪への道を阻止するしかない。




「福島みずほの人権いろいろ」index


HOME


JINKEN BOOKは、(株)解放出版社が提供しています。 無断転載を禁じます 。
Copyright (C)Buraku Liberation Publishing House Co.,ltd 2001, All Rights Reserved


E-mail

(株)解放出版社
Phone:06-6581-8542(代表) Fax:06-6581-8552
東京営業所: Phone:03-5213-4771(営業) FAX:03-3230-1600