福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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秘密保護法の脅威
〈『部落解放』2013年12月号〉

 

 一〇月二五日、秘密保護法案が閣議決定された。とんでもない。衆議院では、特別委員会が設置された。連日審議を行うというスピード審議で、政府は、今国会での法案成立をねらっている。この法案の問題点が広く知られる前に、とっとと成立させようと考えているのだ。戦前、治安維持法が成立したときに、あんなに猛威を振るうとは人々は考えていなかったという話をよく聞く。秘密保護法も同様で、万が一成立すれば猛威を振るうだろう。民主主義を破壊していく。
 秘密と指定されるのは、@防衛に関する事項、A外交に関する事項、B特定有害活動の防止に関する事項(つまりスパイ活動などの防止)、Cテロリズムの防止に関する事項の四類型である。どれも広範囲である。秘密は、行政の長がこれを指定する。ところが、その秘密の指定が合法か違法か、妥当か妥当でないかをチェックする機関も仕組みもまったくないのである。秘密の指定は更新され、総理の同意があれば、当該情報を廃棄することができ、その廃棄したことすら公表されない。つまり、「闇から闇へ」なのである。秘密があったことすら、歴史的に残らない。政府にとって不都合なことは、まったく人々の眼にふれない。「そのような文書の存在は、確認できません」という国会の答弁が続くだろう。ウソで塗り固めた歴史がつくられる。政府にとって隠したいことは、永久に隠されるのだ。
 アメリカはもちろん問題がある国だ。しかし、秘密とされたことも二五年、五〇年、七五年経つと情報公開されることも多い。しかし、日本では基本的に廃棄。永久に情報公開されない。「秘密」の壁をたたいただけで、アクセスしただけで、相談しただけで処罰される。
 この秘密保護法案は、「共謀」「扇動」「教唆」を独立して処罰する。まさに初めての共謀罪。「秘密」を明らかにしようと市民運動家どうしが、議員が相談しただけで、処罰される。
 ところで、「何が秘密か」「それは秘密です」というのがこの法案のポイントなのである。アクセスをしようという人間も、捜査をしようとする警察の側も「何が秘密か」わかっていない。市民が、ジャーナリストが、知らないで地雷を踏むのである。こうなったら、危ういものにはいっさい近寄らないとなってしまう。大本営発表の情報ばかりとなったら、民主主義そのものが破壊される。
 国会のなかで、多くの呼びかけ人と「秘密保護法を考える超党派の議員と市民の勉強会」を立ち上げ、いままで四回行った。五つの政党に所属する議員が呼びかけ人となっている。第一回の勉強会は、山崎豊子さんの『運命の人』のモデルともなった西山太吉・元毎日新聞政治記者にきていただいた。彼は、沖縄返還時の密約をあばいたとして、最高裁で有罪となった。私は、二〇〇六年三月、この密約について参議院の予算委員会で質問をした。この少し前に、我部政明教授がアメリカの公文書館でこの密約についての文書を「発見」し、かつ、当時外務省の担当局長であった吉野文六さんに私自身も直接会って、密約は存在したこと、その文書の日本側の署名は間違いなく吉野さんのサインであることを確認していたのである。
 文書は存在していて、コピーがある。日本側の担当者もしっかり認めている。これ以上の証拠があるか。私は当時の自民党政権(官房長官は安倍さん、外務大臣は麻生さん)に質問をしたが、答えは「そういう密約はありません」ということであった。ここまで証拠を突きつけてもシラを切る。こんなにも事実を隠す政府が、秘密保護法を持ったらどんなことになるのか。密約は「秘密指定」すらされない秘密だろう。「存在しない」のだから指定もありえない。
 沖縄返還時の密約は、「情を通じ」ていなければ無罪で、その存在が明らかになったのか。防衛庁の「三矢研究」を内部告発した人間は、秘密保護法が当時存在していたら、懲役一〇年になったのか。たとえば、日本政府が核武装をするという研究や政策を持っているとして内部告発した人間がいれば、処罰されるのか。政府が市民を違法盗聴していると内部告発したら、処罰されるのか。この社会は市民のものか、政府のものかが問われている。




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