福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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国際基準を逸脱した秘密保護法
〈『部落解放』2014年1月号〉

 

 秘密保護法案が、衆議院の特別委員会で強行採決されて、参議院に送られてきた。一二月六日の会期末まで、多くの人と力を合わせ廃案にしていく。秘密保護法の問題点が広がってきた。これから、知恵と力を振りしぼって、多くの人と力を合わせる。
 治安維持法だって、あれほど猛威を振るうとは人々は思っていなかった。軍機保護法も国会で、慎重に扱う、乱用はしませんと答弁をしながら、まったくのいいがかりで人々を警察に引っ張り、裁判のなかでは秘密が明らかにならず、暗黒裁判で刑務所に送られたのである。治安維持法で問題とされたというだけで、「スパイ」「非国民」とされ、人々はものが言えなくなった。情報統制と、ものが言えなくなる社会に住みたくない。自由と民主主義がある社会をつくらなければならない。
 イラクに大量破壊兵器がないにもかかわらず、あるという虚偽の情報をつくり、アメリカはイラクへの侵攻を決定した。日本政府は、この虚偽の情報をうのみにし、イラク侵攻を支持し、イラクへ自衛隊を派遣した。日本版NSC(国家安全保障会議)をつくり、アメリカのNSCと連携するということは、アメリカの情報に乗っかり、アメリカの世界戦略に日本が組み込まれ、情報と戦略を共有することを意味する。武器の開発と戦争の遂行を共同してやっていくことになる。国民に対しては、「秘密」として情報を出さず、情報を統制し、秘密保護法により、外国の政府に情報を提供することができる。
 新NSC法は、戦争をするための機構となり、秘密保護法は、情報統制と国民の知る権利を弾圧することとなる。来年(二〇一四年)の通常国会に出されるといわれる国家安全保障基本法案は、戦争の手続き法となる。新NSC法と秘密保護法と国家安全保障基本法案は、三位一体で、戦争をするための法律となる。集団的自衛権の行使と合わせれば、四つで、まさに戦争をするための法律が完成する。そのことからも秘密保護法は、絶対に成立させてはならないのである。
 秘密保護法案では、「何が秘密か」「それは秘密です」であり、秘密のなかみは、ブラックボックスかブラックホールである。行政の長が秘密を指定し、内閣総理大臣の同意で廃棄できる。現在、公文書のなかで公文書館に保存されているのは〇・七%、九二・五%も廃棄されている。総理の同意で、ほとんど廃棄されているのである。秘密保護法のもとで、闇から闇へほとんど廃棄されるだろう。まったくの欠陥法案である。
 日本の秘密保護法案について、国際社会から続々と懸念の声が上がっている。
 今年の六月、南アフリカの首都ツワネにおいて、ツワネ原則が発表された。ツワネ原則の策定には、国際連合、人及び人民の権利に関するアフリカ委員会、米州機構、欧州安全保障協力機構の特別報告者がかかわっている。秘密は無期限であってはならない、違法行為や人権侵害行為は秘密としてはならない、ジャーナリストや市民活動家の情報取得行為は、公益性があるかぎり処罰してはならないなどのツワネ原則に、秘密保護法はまったく反している。
 フランク・ラ・リュ氏(言論と表現の自由に関する国連特別報告者)は、秘密保護法案に関し、日本政府にいくつもの質問事項を伝え、強い憂慮を表明した。ラ・リュ氏は、「透明性は民主主義ガバナンスの基本である。その上、内部告発者、そして秘密を報道するジャーナリストにさえも重大な脅威をはらんでいる」と批判している。
 米国の核戦略の専門家で国防総省やNSCの高官を務めたモートン・ハルペリン氏は、日本の秘密保護法案について、政府の裁量が広すぎ、知る権利と秘密保護のバランスを定めた国際基準を逸脱していると批判した。「日本はなぜ国際基準から逸脱するのか、政府は国会採決の前に説明しなければならない。民主主義社会の義務だ」と述べた。
 秘密保護法は、国際水準に合致していない。拙速で、ずさんな法案で、稀代の悪法である。どんなことがあっても成立させてはならない。自由と民主主義のために闘おう!




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