福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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集団的自衛権の解釈改憲
〈『部落解放』2014年5月号〉

 

 いま、もっとも考えていることは、安倍総理が閣議決定のみによって、集団的自衛権の行使を認めようとすることをどうやって阻止するかである。
 第二次安保法制懇が四月にでも、日本国憲法下で集団的自衛権の行使を認めることができるという報告書を提出するといわれている。それを受けて、安倍内閣が閣議決定をする可能性がきわめて高くなっている。
 日本国憲法のもとでは、外国が攻めてきたら、それに対して応戦することができる、つまり、個別的自衛権の行使は認められる。しかし、集団的自衛権の行使、つまり、自分の国が攻められていないにもかかわらず、他国防衛を理由に武力行使をすることは認められていない。集団的自衛権の行使はできないというのは確立されてきたものである。自民党政権も集団的自衛権の行使はできないとしてきた。
 国連発足後、集団的自衛権の行使が援用された例は一四件しかない。ソ連のチェコ侵攻やハンガリー侵攻、アフガニスタン侵攻。アメリカのベトナム戦争やニカラグア侵攻、アフガニスタン侵攻などである。いずれも、大国が他国を侵略したケースばかりである。大きな泥沼の長い戦争。侵略戦争は国際法上禁止されているので、侵略戦争であると言って戦争する国などない。自分の国が攻撃されていないにもかかわらず、他国防衛を理由に、他国を侵略するのである。ベトナム戦争は、アメリカが、トンキン湾で北ベトナムによって攻撃されたことを理由に、戦争を開始した。しかし、アメリカ国務省報告によって、このトンキン湾事件は、まったくアメリカの自作自演であることが明らかとなった。戦争は、嘘と捏造から始まる。柳条湖事件、トンキン湾事件、そして大量破壊兵器などなかったイラク戦争。
 集団的自衛権の行使とは、嘘と捏造で塗り固めて、けんかを買いに行くことだ。けんかを買いに行って、日本政府自身が、戦争の当事国となることである。日本は憲法九条を実質的に削除して、安倍総理の言う「普通の国」となって、アメリカとともに世界で戦争をすることになる。イラク戦争のとき、日本は直接の武力行使はしなかった。小泉総理ですら、非戦闘地域に行く、武力行使はしないと国会で答弁した。もし、あのとき武力行使をしていたら、つまり、日本の自衛隊が人を殺し、殺されていたら、いまいったいどんな状況になっているだろう。
 安倍内閣は、集団的自衛権の行使を、部分的に認めるという提案をする可能性がある。しかし、集団的自衛権の行使は、他国防衛のために武力行使をすることであり、部分的にでも全般的にでも、集団的自衛権の行使を認めることはできない。違憲なことが、なぜ合憲になるのかと国会で質問したが、総理から明確な回答はなかった。政府が、憲法を無視して政治をやるようになったら、民主主義の終わりである。
 まだ、安保法制懇は報告書を出していないが、「放置すれば日本の安全に重要な影響を与える場合」ということを要件にするともいわれている。しかし、日本の安全保障に重大な影響があるということは、なんとでも言える。日本には日米安保条約があり、アメリカが武力行使をするときに、それは日本の安全保障に重大な影響があるとして、日本の武力行使を肯定することになるのではないか。また、日本国憲法下で、何らかのかたちで集団的自衛権の行使を合憲として認めれば、時の政府によって、これができる、あれもできる、この戦争に日本は参加すると、政府の恣意的判断によって武力行使をすることになってしまう。
 安倍総理は、閣議決定によって、集団的自衛権の行使の解釈改憲を認めたあとで、自衛隊法や周辺事態法や船舶検査法などを改正しようとしている。集団的自衛権の行使を日本国憲法のもとで合憲とすることによって、今後、明文改憲をしやすくしようと考えているのではないか。  今国会中、憲法審査会で憲法改正のための国民投票法改正法案が提出される可能性が高くなっている。解釈改憲をしたあとで、いつでも国会で、三分の二の発議をして国民投票を行えるように、準備万端整えつつあるのである。
 集団的自衛権の行使とは、私たちが、私たちの子どもや孫たちが、戦争に行き、殺し、殺されるということである。まさに、政府が戦争のできる国にしようとしているときに、主権者である国民は声を上げていきましょう。




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