福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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ヘイトスピーチの根
〈『部落解放』2014年6月号〉

 

 新大久保などでのヘイトスピーチの映像を見て、ほんとうに怒りが湧いてきた。「良い韓国人も悪い韓国人も殺せ」といったプラカードには、背筋が凍り、怒りが湧く。京都朝鮮第一初級学校に襲撃を加えた場面の映像にも、心が凍り、怒りが湧いてきた。「スパイの子ども」「こいつら密入国の子孫」などと拡声器で怒号している。子どもたちがどれほど恐怖を感じたか。二〇〇九年一二月四日の襲撃事件は刑事事件となり、四人が侮辱罪、威力業務妨害罪、器物損壊罪で有罪判決を受け、確定している。また、民事訴訟でも、京都地裁は二〇一三年一〇月七日、「全体として在日朝鮮人に対する差別意識を世間に訴える意図の下に行われたことは明らかである」として、一二二六万円という損害賠償請求を認めた。画期的な判決だが、事態はきわめて深刻である。
 インターネット上には、差別的な言辞があふれ、本屋に行くと、嫌韓、嫌中の本がこれまた平積みされている。雑誌の見出しにも、韓国、中国けしからんといったタイトルが多く眼につく。また、「反日」とレッテルを貼って、インターネット上でたたいていく。
 ナチスドイツのもとで、ユダヤ人への迫害がどんどんエスカレートしていったことを思い出す。また、関東大震災のときに、多くの朝鮮の人たちが殺害されたことも思い出す。いまヘイトスピーチを止めないと、大変なことになるのではないか。「殺せ」など相手の人格や生存をたたきのめす言動が放置されていたら、いずれ生存まで脅かされるのではないか。いや、「殺せ」と言うこと自体、いまも生存を脅かしつづけているのである。
 なぜこのように広がったのか。
 安田浩一さんが書いた『ネットと愛国』(講談社刊)と北原みのりさんと朴順梨さんが書いた『奥さまは愛国』(河出書房新社刊)は、ともに労作であり、なぜ彼らがそのような行動をとるのかに、苦労の多い取材を通して率直に迫ろうとしている。そのなかにたくさんのヒントが隠されているように思う。先日、斎藤美奈子さんの講演を聞いた。小林よしのりさんの『戦争論』を子どものときに読んでいた世代がいまや三〇代、四〇代になっている。この二〇年間の影響は大きかったのではないかという話だった。「あの戦争は侵略戦争だと言われてきたが、そうではない。学校もメディアも決して本当のことを伝えない。私が(私たちが)正していかなければならない」という気分が、ある意味、少しずつ浸透したのではないか。二〇年間の、さまざまな人たちのさまざまな、静かな、あるときは果敢な戦略がきいてきているように思う。私たちも、時間をかけてでも変えていく戦略を持たなければならない。
 それともうひとつ、政治の役割である。ヘイトスピーチをむしろ政治がつくってきたと言えないだろうか。高校授業料の無償化が実現したときに、朝鮮学校は除外された。いまも除外されている。第二次安倍内閣は除外をすると宣言した。このような姿勢が、朝鮮学校は差別してもいいのだ、差別をされても仕方がないのだという風潮を生んでいるのではないだろうか。実は、政府の思惑や姿勢をバックに、差別をする人々はより居丈高になっているのではないか。
 安倍総理は一時期、村山談話や河野官房長官談話の見直しに言及した。いまは談話を踏襲すると言っているが、談話の作成過程を検証すると言っている。談話の考え方を生かしていくことこそ必要なのに、「検証する」と言うなかで、やはり談話は揺らいでいる。いや、揺らがされている。総理が靖国を参拝することは、第二次世界大戦が侵略戦争であったという歴史認識を揺るがすことになる。戦前、国家神道が戦争を遂行する精神的支柱になったことをどう考えるかが問われるからである。政治がヘイトスピーチを生み出すことに力を貸しているのではないかということを問うていく必要がある。
 それにしても、ヘイトスピーチの根源には根深い差別がある。人種差別撤廃基本法を求める議員連盟が発足。超党派で、根深い差別をなくすために人権差別禁止法を作ろうという話をしている。差別の根源を打ちくだいていこう。




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