福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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自由権規約委員会の審査と勧告
〈『部落解放』2014年10月号〉

 

 七月一五日〜一六日、自由権規約委員会による第六回日本政府報告書審査がジュネーブで行われた。そして、二三日に総括所見が採択された。  この自由権規約委員会による審査は、わたしにはとても思い入れがある。第二回の日本政府報告書審査が行われた一九八八年、ジュネーブに行き、審査を傍聴した。日本のこの法律は、この運用は、人権規約のこの条項に反しているのではないか、といった真摯な議論が全面的に展開された。日本の人権問題がこんなに真剣に議論されているということに感激した。国際人権の観点から日本の人権状況を変えていくことができるのではないかと思ったときである。
 その後、国際人権についての多くの人たちの大きな取り組みは進展し、法律改正などを勝ち取ってきた。今回の第六回の審査についても多くの人が努力をし、傍聴をし、報告を出してくれた。日本の人権状況があまり進展せず、むしろ悪くなっているのではないかという委員たちの危機感が、ひしひしと伝わってくる。
 選択議定書の批准も、国内人権機関をつくることも、遅々として進んでいない。
 静岡地裁は袴田巖さんの再審開始を決定し、四五年以上拘禁されていた袴田さんは死刑囚監房から釈放された。委員会では、この袴田事件を題材に、代用監獄、取り調べ、死刑制度、死刑確定者の処遇などが大きな議論になった。狭山事件の石川一雄さんも苦しんだ代用監獄の問題については、委員会は一九八八年から勧告をしている。にもかかわらず、日本政府の対応はなぜ変わらないのかと委員たちは迫った。
 政府が法制審議会で示した捜査の可視化は、きわめて限定されている。委員会は、「取り調べについて、継続時間の厳格な時間的制約及び方法を設定する立法措置と取り調べ全体にわたるビデオ録画」を勧告している。
 秘密保護法についても勧告が出た。「委員会は、秘密保護法が、秘密に特定できる事項に関する定義が広くて曖昧であること、秘密指定に関して一般的な条件を含んでいること、そしてジャーナリストや人権擁護者の活動に深刻な萎縮効果を及ぼしうる重い刑罰を科していることを懸念する」。秘密保護法は、廃止するべきである。
 ジェンダー平等については、マイノリティの女性のことがしっかり勧告された。
 「締約国は、部落の女性を含むマイノリティの女性の政治的参加を評価し支援するための具体的な措置をとり、女性をフルタイムの労働者として採用することを促進し、男女の賃金格差を縮める努力を倍加させるべきである」。このことをしっかり実現させていこうではないか。
 レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルおよびトランスジェンダーの人々(LGBT)についても、「性的指向およびジェンダーアイデンティティを含むあらゆる理由に基づく差別を禁止し、差別の被害者に効果的で適切な救済を提供する包括的な差別禁止法を採択すべきである」とした。
 自由権規約委員会でも、そして八月に審議された人種差別撤廃委員会においても、ヘイトスピーチはきわめて重要な問題として取り上げられた。あまりのヘイトスピーチに、委員たちは大変な危機感をもった。「締約国は、差別、敵意または暴力の扇動となる、人種的優越または憎悪を唱えるあらゆる宣伝を禁止すべきであり、またそのような宣伝を広めることを意図した示威行動を禁止すべきである」と勧告した。
 「慰安婦」に対する性奴隷制慣行については、即時かつ効果的な立法的、行政的な措置をとるべきであるとして、被害者とその家族の司法へのアクセスおよび完全な被害回復、教科書への十分な記述を含むこの問題に関する生徒・学生と一般市民の教育、公での謝罪を表明することおよび締約国の責任の公的認知、被害者を侮辱あるいは事件を否定するすべての試みへの非難などを挙げている。
 議長は、「慰安婦」問題について「意見の対立があるようだが、私には理解ができない。私の頭が悪いのだろうか。『強制連行されたのではない』と言いつつ、『意図に反した』という認識が示されている。これは理解しにくい。性奴隷である疑念があるなら、日本政府はなぜこの問題を国際的審査によって明確化しないのか」と述べた。
 技能実習制度問題や精神障害者の非自発的入院、人身取引などについても勧告が出た。
 今回の勧告は、日本の人権状況についてきわめて重要な指摘をしている。無視や先送りは許されない。ボールは市民社会に投げられた。真摯に向き合い、実現するよう努力すべきである。




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