福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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ヘイトスピーチを許さない
〈『部落解放』2015年2月号〉

 

 ヘイトスピーチの現場を見るにつけ、人権の二一世紀、人権啓発などが吹っ飛ぶくらいのひどさに衝撃を受けている。「よい韓国人も、悪い韓国人も殺せ」「死ね」「帰れ」など、すさまじい暴言が続いている。しかも、それが陰でひっそりと差別的な言辞として語られるのではなく、真っ昼間、大通りで叫ばれているのである。
 京都の朝鮮学校の門前で、ヘイトスピーチを続けたことに関して、最高裁で違法の判決が出た。奈良の水平社博物館の前でヘイトスピーチを行った者に対しても判決が出ている。さまざまな裁判を提訴し、闘っていらっしゃるみなさんに心から敬意を表する。カウンターと呼ばれる人たちが対抗している。「のりこえネット」が実にがんばっている。しかし、ヘイトスピーチはやむことがなく、続いている。この状況をなんとか変えたい。
 国会の中では、人種差別禁止法案を提出するべく超党派で議員連盟をつくり、活動している。国会の中でできることは、法律をつくること、質問をすること、この状況を変えるべく政府に働きかけること、問題を共有し、運動をつくることなどがあると思う。
 一つひとつを、全部しっかりやっていかなければならない。「殺せ」や「虐殺」が公然と語られる。存在そのものが否定され、いのちまで脅かされる。このような発言を放置していたら大変なことになる。
 日本のなかでつくられてきた根深い差別意識が、吹き上がっている。煽られている。関東大震災のときの朝鮮人虐殺や中国人虐殺を想起させる。また、ナチスドイツのユダヤ人に対する水晶の夜、クリスタル・ナハトを思い出させる。ユダヤ人の店などが襲撃され、店のガラスが粉々に砕けて、道路がキラキラと光り、水晶の夜、クリスタル・ナハトと呼ばれた。まさに襲撃である。それから、強制収容所送りへとエスカレートしていく。
 ヘイトスピーチや特定のものを攻撃する行動を許してはならない。
 私は、小学生のとき、母親に聞いた。「どうしてあの戦争を止めることができなかったの」。母親は、気の毒そうな顔をして、「みずほちゃん、当時『戦争反対』なんて言ったら、『非国民』と呼ばれて、警察に引っ張られていくから、そんなこと言えなかったのよ」と答えた。
 まさに「非国民」は、人々を黙らせるための言葉であった。いまは、それが「反日」や「売国奴」になっている。「反日」や「売国奴」が、侮蔑の対象となり、蔑称として、バッシングの言葉となっている。週刊誌の見出しを「反韓」「嫌中」の言葉が大きく占め、韓国や中国に対する嫌悪や反感を煽っている。
 新聞記者で、在日韓国人の人は、署名原稿で明らかにわかるので、それでバッシングを受けていると語ってくれた。韓国・朝鮮籍で弁護士になっている人からは、名前で韓国・朝鮮籍だとわかるので、事件の相手方の人から、そのことですさまじい攻撃を受けていると聞いた。なぜ、「在日」として攻撃を受けるのか。差別してもいい、侮辱してもいい、切り捨ててもいい相手という扱いを受け、また、「反日」「売国奴」とレッテルを貼れば、何を言っても許されるという構図をつくっている。どれほどまでの差別意識か。
 差別をしてもいい、何を言ってもいい、侮辱してもいい、貶めてもいい、攻撃してもよいとされる対象は、拡大していく。
 「向かっていくのなら、強い者に向かっていけよ」「権力に向かっていけよ」と言いたいが、自分よりも弱いものだと思えば、そこに対して牙をむいていく。それによって、黙らされている人々がいる。声を上げれば、さらにバッシングを受けるので、黙らされているのである。黙らされる人々を多くしていくことが、目的なのだ。魂の殺人である。
 子どもの世界で、いじめられている子どもの味方をすれば、次は、自分がいじめっ子にいじめられるので、見て見ぬふりをしているうちに、次は自分がいじめられるという構図が広がっていく。いじめをなくすこと、バッシングをなくすこと、ヘイトスピーチをなくすことこそ、やらなければならないことなのに。
 政治家など公人の差別発言は、やめさせなければならない。さらに、メディアのなかで行われるヘイトスピーチも見過ごしてはならない。インターネット上のヘイトスピーチも何とかしなければならない。
 さまざまな形で知恵と力を絞り、この醜悪な世界を変えていこう。




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