福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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憲法違反の戦争法案
〈『部落解放』2015年5月号〉

 

 与党が、安全保障法制について合意した。ゴールデンウィーク明けに、政府は、一四本から一八本にわたる戦争法案を出す予定である。なんとか食い止めたいという思いでいっぱいだ。戦争法案は、間違いなく違憲の法律である。違憲の法律を、なぜ閣議決定し、国会に提出できるのか。
 できるだけ大きく広げて、主権者の反撃でこれを止めていきたい。
 街頭演説をしていると、たまに「でも、外国から攻められたらどうするんですか」と聞かれることがある。自分の国が外国から攻められたら、それに対して反撃ができる、つまり個別的自衛権の行使は、これまでも認められてきた。
 問題は、政府が、戦後七〇年近く自民党政権のもとでも憲法違反としてきた集団的自衛権の行使をやろうとしていることである。集団的自衛権の行使とは、他国で、他国防衛を理由に戦争をすることである。  五月に出てくる法案は、他国で武力行使ができる、他国で戦争をするという法案である。
 二〇一五年三月二〇日、参議院予算委員会で、安倍総理に対して質問をした。「新三要件を満たせば、他国で武力行使をすることができるのですね」。総理の答えは「武力行使が可能となる」というものである。
 武力行使ができる新三要件とは、「我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること、そして、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと、そして、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと」である。
 個別的自衛権、つまり、自分の国が攻撃されているかどうかは、明確なことである。いままで、個別的自衛権と集団的自衛権は峻別されてきた。しかし、集団的自衛権を認めるこの要件は、一体なんだろう。ものは言いようというか、政府の価値判断が明確に入ってくる。「我が国の存立が脅かされ」るとは、どういう場合か。
 総理は、重大な経済的理由もこれにあたる場合があるとしている。紛争時のホルムズ海峡における機雷除去は、集団的自衛権の行使である。しかし、これを日本ができるのは、日本が石油に大きく依存しているので、「我が国の存立が脅かされる」場合にあたるというのである。
 重要な経済的理由が、わが国の存立を脅かす場合に含まれるとすれば、世界中でビジネスを展開している日本は、さまざまな形でわが国の存立が脅かされると言えるのではないか。つまり、この要件は伸縮自在であり、経済的な理由も入れてしまえば、フリーハンドで、世界中で集団的自衛権の行使、武力行使ができることになる。
 米軍や多国籍軍とともに世界中で戦争をするのに、「国民の命と幸せな暮らしを守るため」と言う。他国で、他国防衛を理由に戦争をすると言ったのでは、国民を納得させることができないので、そう言うのである。
 考えてみると、侵略戦争だと言ってされた戦争はどこにもない。日本の中国への侵略しかり、ベトナム戦争しかり、イラク戦争しかり。戦争は嘘と捏造から始まっている。
 安倍総理は、「積極的平和主義」と言いながら、集団的自衛権の行使ができる法律を出そうとする。そもそも積極的平和主義とは、戦争が起きないように、貧困や紛争を解決し、戦争を積極的に防いでいくというものである。安倍内閣は、積極的平和主義の言葉を使いながら、積極的戦争主義である。
 二度と戦争をしないというのが、戦後の日本の決意であり、出発点であり、七〇年間の政治であった。三〇〇万人以上の日本人と二〇〇〇万人以上といわれるアジアの人々の犠牲の結果、獲得した決意と日本国憲法。これをなぜ踏みにじることができるのか。安倍総理は、来年七月、参議院選挙が終わったら憲法改正の発議をすると明言している。解釈改憲から明文改憲へ。解釈改憲も明文改憲も許してはならない。とにかく力を合わせていきましょう。




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