福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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禁演落語
〈『部落解放』2015年7月号〉

 

 戦争中に禁止された落語の演目があると聞いていました。
 戦争反対なんて言うのではなく、色恋沙汰、廓物、間男、バクチなど五三本が禁止されました。「はなし塚」に台本を捨て、その演目は演じなくなったのです。どんなものだろうか、聞きたいなとずっと思っていました。
 新幹線に乗ったときに、「笑点」に出る師匠たちが乗ってこられました。わたしの前に座ったのが林家たい平師匠でした。禁演落語を議員会館でやってくださいと頼んだら、快諾してくださいました。自民党から共産党まで一七人の議員が呼びかけ人になり、超党派の議員で企画をして、「禁演落語を聞く会」を開くことにしました。
 それで、五月二六日、参議院議員会館講堂に高座を作り、落語をやっていただきました。講堂は、大入り満員。呼びかけ人以外の議員もたくさんきてくれましたし、たくさんの市民の方がきてくださいました。
 読売新聞の長井記者が、禁演落語とは何かを解説してくれました。「はなし塚」に台本を捨て、戦後、掘り起こしたのです。
 師匠がやってくださった演目は、「お見立て」。吉原の花魁と通ってくる客の話。どうなっていくのか、興味津々。生で聞く落語は、迫力があり、おもしろく、楽しかったです。
 わたしたち議員も話すのが仕事だけれど、プロは違うなあと唸ってしまいました。なりきって、間の取り方もうまく、話と動作で、無限に想像力をかき立てます。
 ワッハッハと笑いながら、なぜこういう落語を演じることができなくなったのだろうと思いました。戦争反対という落語ではなく、色恋沙汰が駄目になるのですから、つまんない世の中になってしまうわけです。しかも、わたしは、弾圧で演じることができなくなったと思っていましたが、そうではなかったのです。自主規制で、これらの演目は演じないようにしようと決め、台本を埋めたのです。言われる前に自主規制をするというのは深刻です。いま、まさにさまざまな形で、自主規制が始まっているのではないでしょうか。
 当時、敵性用語ということで、カタカナが駄目になり、カレーライスは「味入汁かけめし」になります。愛国婦人会の人たちが、街頭でハサミを持ち、振り袖は切りましょうとやります。パーマネントはやめましょうともなります。くだらないですが、こんなくだらないことが起きるのが、戦争です。
 ちょうど、この禁演落語を聞く会をやった日は、安保法制、戦争法案が、衆議院で審議入りをした日です。
 総理は、戦争法案なんて言うのはレッテル貼りで、甘受できないと言います。しかし、憲法違反の集団的自衛権の行使を初めてできるようにし、戦場で武力行使ができるようになるのですから、まさに戦争法案です。戦場での武力行使は、戦争です。戦場の隣で、米軍などに弾薬を提供し、一体となって戦争に協力することも、まさに戦争です。政府が提出した法案の名前は、「平和安全法制整備法案」(一〇本の法律の改正案)と「国際平和支援法案」です。戦争をするのに、平和という言葉を使うなと思います。
 総理はまた、戦争に巻き込まれることはないと言います。しかし、いままでの自民党政権は、憲法九条を盾に、アメリカなどに対して海外での武力行使を断ってきました。憲法九条の解釈改憲をしたら、九条を盾に断ることはできなくなります。
 戦争といっても、なかなかリアリティーがないかもしれません。しかし、できなかった戦争をできるようにするのですから、戦争はありえます。また、具体的に戦争していなくても、戦争のできる社会は、情報や教育をコントロールし、ものが言いにくい社会です。戦争のできる国は、監視社会になっていきます。情報や教育がコントロールされる社会はごめんです。ものが言えない社会はごめんです。戦争反対と言えない社会は息苦しい。アッハッハと自由に笑うことができない社会は、ごめんです。そんな社会にしないために、一人ひとり声をあげていきましょう。




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