福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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うそとだましの国会答弁
〈『部落解放』2015年8月号〉

 

 小学生のとき、母親に聞いた。
 「お母さん、なぜあの戦争、止められなかったの?」
 現在、八五歳になる母親は、当時、ほんとうに困った顔をして、しばらく考えて、「みずほちゃん、当時、戦争反対なんて言ったら、警察に引っ張られていくから、そんなこと言えなかったのよ」と、すまなそうな顔をして言った。
 小学生のみずほちゃん、半分は納得したが、半分は納得しなかった。どうして大人たちは、戦争のずっと手前の段階で、戦争を止めることができなかったのだろうか。その言葉は、いま、ブーメランのように私に戻ってきている。どうしてもっとがんばらないのかと。いま、戦争がこうやって始まるということを、リアルタイムで経験している。
 去年、山田洋次監督の「小さいおうち」という映画を見た。第二次世界大戦へ向かうなかでの、東京の山手の家族を描いている。
 夫は、部下たちと話をしている。アメリカに行ったこともあり、「近衛総理は、アメリカとの戦争は、回避するのではないか」と楽観的な意見を述べている。南京陥落のニュースに沸き立ち、デパートでバーゲンセールが行われる。戦争しているという本当の実感が、人々にどれほど共有されていたのだろうか。日中戦争は、日中戦争と呼ばれずに、たとえば満州事変と呼ばれる。
 これから、もし日本が戦争するようになったときに、どういうことが起きるだろうか。戦争と呼ばれずに、存立危機事態、重要影響事態と呼ばれ、戦争の悲惨さや実相は、確実に隠されるだろう。いま、国会で、戦争法案が議論されている。
 国際平和支援法案と、一〇本の法案の改正法案を一括した法案になっている平和安全法制整備法案の二本である。実質的には一一本の法律が議論されている。
 国会の議論を聞いていて、どうだろうか。総理に「今日の天気は晴れですか」と聞くと、「おとといは、曇りだったような気がする」といったような答え。質問と答えがかみ合っていない。
 「海外で武力行使をするのか」と聞くと、総理は、法案の新三要件を長々と読み上げ、はっきりと答弁しない。武力行使をすることをようやく認める。アメリカの戦争にまきこまれることはないと言いながら、米艦防護をしなくていいのかと言う。戦場の隣で弾薬を提供することが可能となるのに、リスクは高まらないと言う。
 うそとだましではないか。
 議論が混迷しているのには、ふたつ理由があると考える。
 まず、憲法違反である集団的自衛権の行使を合憲と言いくるめるために、論理が破綻しているのである。
 憲法学者も、歴代の内閣法制局長官も、日本弁護士連合会も、法律家たちは憲法違反だと言っている。そして法律家たちだけではなく、国民・市民から見ても憲法違反である。
 次に、集団的自衛権の行使、つまり、他国防衛を理由に他国で戦争する、売られていないけんかを買って武力行使をするのに、総理は、日本人の命と暮らしを守ると、あたかも個別的自衛権のような言い方をするので、混乱を招くのである。
 集団的自衛権の行使の要件について、日本の存立危機事態という訳のわからない概念を持ち込んで、他国での戦争を無理やりに日本と結びつけるので、大混乱を招いている。
 世界中で、アメリカ軍とともに、多国籍軍とともに、いつでもどこでも戦争をするのに、無理やりに日本の利害に結びつける。
 侵略戦争は、国際法上禁止されている。どんな国も、戦争するのに、侵略戦争をすると言って始めたりしない。自分の国を守るために、自衛のためにと、国民に対してうそをつくのである。
 戦争は、うそと捏造から始まる。柳条湖事件、トンキン湾事件、イラク戦争など。平和のために戦争する、国民の命と暮らしを守るために戦争すると言って、政府が、日本の若者を他国に送り、人を殺せと命ずる。そんなことを許してはならないと思う。




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