福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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夫婦同姓に関する最高裁判決
〈『部落解放』2016年2月号〉

 

 夫婦同姓の強制と女性のみに存在する再婚禁止期間について、二〇一五年一二月一六日、最高裁判所から判決が出た。再婚禁止期間については、六カ月間の禁止期間を設けることが違憲であるとの判断が出された。しかし、ほんとうに残念ながら、夫婦同姓の強制については違憲という判断は出なかった。報告集会に参加したが、闘った原告のみなさん、それを支えた弁護士のみなさん、支援者のみなさんの長年の努力とがんばりに、心から敬意を表する。涙が出るような思いであったが、報告集会に出て、逆に元気をもらった。これからもがんばるぞということである。
 夫婦同姓の強制については、一五人の裁判官のうち五人の裁判官が違憲の意見で、女性裁判官三人は全員が違憲の判断、そのうち二人の裁判官は弁護士出身である。
 判決文を読み、結婚改姓をする女性の苦労が、多くの裁判官にわかってないなあと痛感、怒り。女性ならだれでもいいというわけではないが、女性裁判官も増やさなければと思う。判決は、夫婦同姓に合理性があると言う。しかし、夫婦同姓に合理性があるかどうかではなく、夫婦同姓を強制していることが問題ではないかと考えるべきである。
 このことについて、岡部喜代子裁判官は少数意見で次のように言っている。「九六%もの妻が夫の氏を称することから、夫婦同氏に例外を設けないことは、多くの場合妻となった者のみが個人の尊厳の基礎である個人識別機能を損ねられ、また、自己喪失感といった負担を負うこととなり、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した制度とはいえない」。そのとおりである。
 また、判決は、最近、通称使用が社会的に広まっていることから、夫婦同氏制度がもたらす不利益は一定程度は緩和されうるものであるとした。原告たちは裁判のなかで、通称使用ではまったく根本的な問題の解決にはならないことを力説し、いかに大変かを訴えたのに、それは判決に生かされなかったのである。
 戸籍名と通称とを二つ使い分けるのは、大変である。パスポートや運転免許証は戸籍名である。銀行口座は戸籍名でしかつくれない。そんななか通称を使うのは大変である。細かいことだが、通称で仕事をしてきて、たとえば取締役になったとする。取締役になれば、登記簿謄本をつくるのに戸籍名でなければならない。この場合、問題が生じて、戸籍名に名前を変えたりしている。労務行政研究所が大企業など三七〇〇社を対象に行った調査では、仕事で通称として旧姓使用を認める企業は、一九九三年の一三・二%から大幅に増え、二〇一三年には六四・五%になっている。これだけ多くの女性が、ダブルネームを使い分けているわけだ。今年五月に経済産業省の副大臣が、女性活躍を推進するためには何が必要かと言ったときに、いの一番に上がったのが別姓の導入であった。経済活動の足かせにすらなっているし、待ち望んでいる人は多いのである。女性の活躍と言いながら、選択的夫婦別姓すら許容しないということは矛盾である。
 実はこの判決を読んでいて、いちばん違和感があった部分が次のところである。「婚姻の重要な効果として夫婦間の子が夫婦の共同親権に服する嫡出子となるということがあるところ、嫡出子であることを示すために子が両親双方と同氏である仕組みを確保することにも一定の意義があると考えられる」。つまり、子どもが両親と同じ氏であることが「嫡出子」であることを示すとしているのである。逆に、子どもが親と氏が違うことは「嫡出子」でないことを表すと言っているのだろうか。両親が結婚届を出しておらず、婚外子であることをなぜ名前で表す必要があるのだろうか。また、通称を使用している場合であっても、外形的には、子どもと一方の親は姓が違う。姓が違うからといって、結婚していないともいえないのである。いま、だれが見ても家族は多様化している。子どもと親の姓が違うことが問題であるかのようなこのような考え方は、逆に差別を生んでいくのではないだろうか。いろんな家族がある。いろんな姓の人がいる。それぞれが尊重されるべきというべきである。
 今回の最高裁判決は、実に残念である。しかし、歩みを止めるわけにはいかない。ボールは内閣と国会に投げられた。まさに、国会の中でがんばっていきます。




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