福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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貧困、学費、奨学金
〈『部落解放』2016年3月号〉

 

 街で街頭演説をしていると、実にさまざまな人に声をかけられる。
 「福島さん、私は、アルツハイマーの父親を六年間介護して、いま、半分認知症の母を三年間介護しています。年金が六万円なので、施設に預けることができません。私の時間は二四時間中一秒もないんです。こんな人間がいることをぜひ知ってください」
 教師たちからは、子どもたちの貧困の話を聞く。
 貧困率は、ますます上がっている。しかし、政治は、格差をつくり、貧困を拡大している。また、みんなの生活実感が、まったくわかっていない。先日、安倍総理が、「景気は回復して、パートで働く人が増えていく。妻は働いてなかったけれども、景気が上向いてきたから働こうかと思って働きはじめて、妻が月二五万円、夫が月五〇万円」と述べた。ほんとうに驚いた。まず、そもそも景気がよくなったから働こうかという人がいるだろうか。生活が苦しい、住宅ローンや子どもの教育費、食べさせるために働くという人ばかりではないか。また、月二五万円という数字にも多くの女性が怒った。パートで年収三〇〇万円以上の人は、一%しかいない。短時間労働者の女性の月収の平均は、九万一一八一円である。
 国民年金は、二〇歳から六〇歳まで毎年払いつづけて、六万五五四二円である。私は、国民年金の人、無年金の人によく声をかけられる。年金が抑制されて大変だ、消費税を上げないでください、国民年金で借家住まいだから大変だという声である。景気がよくなった、アベノミクスは成功しているという総理の演説は、どこをみているのかと思う。
 参議院の予算委員会で、一月一八日、質問をした。貧困と学費、奨学金についてである。母子家庭の平均年間就労所得は、一八一万円である。日本は、母子家庭の貧困率が高く、就労して貧困率が高くなるという国である。  ところで、大学の授業料は、うなぎ登りに高くなっている。
 一九六五年から一九七一年まで、国立大学の授業料は一万二〇〇〇円だったのが、現在は五三万五八〇〇円である。いま入学金は、国立大学が二八万二〇〇〇円。私立大学は、授業料八六万四三八四円、入学金が二六万一〇八九円で、合わせて一〇〇万円を超している。たしかに高くなっている。国会で、平均年間就労所得が一八一万円の母子家庭で払えると思うかと質問したが、総理からの答弁はなかった。
 ヨーロッパの多くの国は、大学の授業料も入学金も無料である。日本も批准している国際人権規約A規約は、高等教育の無償化をうたっている。それでは、大学の授業料を無償にするには、どれだけ税金がかかるか。入学金と授業料を合わせて、国公立大学では四一六八億円、私立大学では二兆六八〇八億円である。合わせて三兆〇九七六億円。莫大な金額であるが、方向としては、無償化をめざすべきである。経済的な理由で進学を断念する若者が出ないようにと思う。
 親の実質賃金が下がり、授業料も高騰していることから、いま奨学金をもらっている大学生は四八%である。平均返済額は三〇〇万円といわれている。私は、借金が三〇〇万円、五〇〇万円、八〇〇万円、一〇〇〇万円といった大学生、大学院生、社会人に会ってきた。いろんな人からメールをもらう。息子さんが結婚して、息子さんも相手も奨学金の返済があるため、子どもを産もうということにはならないとあった。また、大学院に行きたいが、学費や奨学金のことがあるので、就活をしている大学生もいる。
 社会人を始めるときに何百万円という借金を背負って出発するというのは、ほんとうに大変だ。ブラック企業なので退職したなどとなると、返済ができず、延滞金がつく。給付型の奨学金はなく、無利子ではなく有利子の奨学金が増加している。借りた若者が自己破産をしても、連帯保証人である親の借金は残る。親が自宅を手放したり、退職金を使ったりということにもなる。若者の奨学金問題にとりくんでいると、下流老人や老人破産の現実にぶち当たる。
 給費型の奨学金を創設すべきだと質問したら、文部科学大臣が、前向きな答弁をしてくれた。奨学金は、金貸しのビジネスではなく、教育支援であるべきである。
 貧困、学費、奨学金の問題にとりくんでいく。




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