福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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一緒に立ち上がろう
〈『部落解放』2016年4月号〉

 

 平和と平等が手を携えてやってくるというほんとうに好きな言葉がある。これと反対の言葉が、戦争と差別排外主義が手を携えてやってくるということではないか。
 さまざまなヘイトスピーチが、人を脅かし、命や生活を破壊しようとしている。内田樹さんと『「意地悪」化する日本』(岩波書店刊)という対談の本を作った。生活が苦しい、将来に希望がもてない、そんななかで、他者を思いやることや共感をすることができにくくなり、バッシングをしたり、意地悪をすることで、力を発揮しようとすること、そして政治の課題などについて語り合った。内田さんは、対談の最後に「正直、親切、愉快」という三つのキーワードを示してくれた。意地悪化する日本で、ファシズムに足を突っ込もうとしているなかで、対抗するキーワードは、正直、親切、愉快である、という意味だ。正直というのも、親切というのもわかる。そして、愉快というのも大事。愉快にやらなければ、長続きもしない。
 いま、アメリカの大統領選挙で、サンダース旋風が起きている。サンダースさんは、民主社会主義者を自任している。あの大資本主義の国で、民主社会主義を自任する候補者が、大健闘している。彼は、富の再分配、貧困の解決、格差是正を訴え、時給一五ドルの最低賃金、公立大学の授業料の無償化、TPP反対などを主張している。
 アメリカの最低賃金は七ドル半。しかし、コネチカット州などで、生活賃金条例などができていった。生きさせろ、だ。生活できる賃金を、子どもに食べさせられるだけの賃金を、である。アメリカの貧困率は一七・四%(日本は一六・〇%、二〇一〇年)である。
 英字新聞記事の写真を見ると、「スターウォーズ」のレイア姫の扮装をした、サンダース陣営の若い女性がボードを掲げている。「私たちを助けて。あなたは、私たちの唯一の希望だ」と。サンダースさんは、企業献金によらず、たくさんの人たちの個人献金に支えられている。若い人たちに支援されている。この社会をなんとか変えてくれということだ。大企業が政治家に多額の政治献金をして、政治が大企業の利害で動かされることに、みんな嫌気がさしている。ひとにぎりのための政治ではなく、みんなのための政治を! サンダースさんのキャンペーン動画を見ると、合言葉は「スタンダップ・トゥギャザー(一緒に立ち上がろう)」。「トゥギャザー(一緒に)」という言葉は、まさにいまのキーワードだ。
 日本でも、これから社会民主主義をさらに訴えていきたい。富の再分配、貧困の根絶、時給一五〇〇円、大学の授業料の引き下げ、給付型奨学金の創設などである。一パーセントのための政治ではなく、九九パーセントのための社会をつくろうである。格差と貧困は戦争の温床である。だから、戦争反対と格差是正、貧困の根絶を両方やっていかなくてはならない。
 ところで、最近、二冊の本を読んだ。まず、『ヒトラーとナチ・ドイツ』(石田勇治著、講談社現代新書)。本の帯に「なぜ文明国ドイツにヒトラー独裁政権が誕生したのか?」とある。もう一冊は『ヒトラーに抵抗した人々―反ナチ市民の勇気とは何か』(對馬達雄著、中公新書)。ユダヤ人救援、エルザーのヒトラー爆殺未遂事件、白バラ運動、ワルキューレ作戦など。本の帯に「祖国を愛する者は、ヒトラーのために戦ってはいけない」とある。どちらの本も身につまされる思いで読んだ。  『ヒトラーとナチ・ドイツ』のなかに、一九三三年年二月三日、ヒトラーが行った将官たちへの秘密演説のことが載っている。非公開の二時間に及ぶ演説である。
 「内政では、国内諸勢力を転向させることが肝要である。これに反する動きは容赦しない。考えを改めない者――平和主義者――は屈服させる。マルクス主義を撲滅する。青少年と国民に『闘いのみが我らを救う』という考えを植えつける。青少年を鍛錬し国防意識を強化する。国家と民族への反逆に死を。権威主義的国政を実現し、がんのような民主主義の宿弊を除去する。」
 「がんのような民主主義の宿弊の除去」とは、ワイマール憲法の民主主義的諸制度を一掃させることであると、石田教授は書いている。この演説は、いまの日本の政治の方向と似ているのではないか。日本国憲法の除去である。
 未来を変えるために力を合わせていきましょう。




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