福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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基地と女性の人権は両立しない
〈『部落解放』2016年7月号〉

 

 沖縄で、女性が性暴力にあい、殺害された。いつまで女性が性暴力にあい、いつまで殺害されれば、終わるのか。いつまで続くのか。沖縄で重大犯罪が起きるたびに、アメリカ大使館や政府に抗議してきた。綱紀粛正という言葉を何度聞いただろうか。しかし、何も変わらない。
 事件が起きたあと、沖縄の女性たちは、「被害者はわたしだったかもしれない」と言った。自分も被害者になりうる。自分の娘も、自分の孫も被害者になりうる。他人事ではないのだ。犯罪や危険や恐怖と隣り合わせに生きている。もう終わりにしなければならない。
 一九九五年、沖縄で、一二歳の女の子が性暴力にあった。二〇年経ってもまったく変わらない。二〇年前に生まれた女の子が、性暴力にあい、殺された。米軍の犯罪が多発している。二カ月前にも強姦事件が起きたばかりだ。
 沖縄の女性たちは、基地と女性の人権は両立しないと活動してきた。そのとおりである。基地があるかぎり、女性への性暴力は続いていく。
 「戦争と一人の女」という映画を思い出した。
 中国大陸で、殺人や強姦を行ってきた男が、戦争が終わって帰ってくる。ヤミ米が手に入ると女性をだまし、人里離れたところにおびき出し、性暴力を繰り返す。殺人も厭わない。戦場と日常生活がつながっている。日常生活がはじまっても、戦争の延長線を生きている。強姦といっても、そのすさまじさに眼を覆った。強姦の前に殴りつけ、首を絞め、気を失わせ、めちゃくちゃにする。
 戦争で人を殺すには、人間が人間のままではやっていけない。どこかで殺人マシンになり、人が人でなくなるのだ。そして、人を人と思っていたら、殺人、そして戦争はできない。人が人でなくなる戦争と、人が人でなくなって戦争から戻ってきても殺人を行う。その映画を思い出した。戦争が人を変えてしまうのであれば、犯罪は町のなかで起こりつづける。
 もちろん性暴力は、基地のあるなしにかかわらず、どこでも起こりうる。しかし、ウオーキングに出かけた街中で、このようなかたちで起きるのは、やはり基地の街、沖縄であるからだ。
 地位協定の問題も大きい。今回は日本の警察が逮捕した。しかし、地位協定が適用になるときは、日本の警察は身柄を拘束できない。これが不平等条約といわれる中身である。
 「日本国が裁判権を行使すべき合衆国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の拘禁は、その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行なうものとする」とある。起訴されるまで、合衆国が身柄を確保しているのであれば、日本の警察は捜査ができない。加害者が、米軍の軍人・軍属である場合は、適正な捜査手続きが担保されないため、十分な処罰が加害者に対してなされない可能性があるのである。
 かつて沖縄で犯罪を犯した米兵は、基地のなかに逃げ込めばよくて、そのうち本国に帰ってしまうと聞いた。犯罪を犯しても逃げおおせる、大したことにはならない、守ってもらえるという感覚になるのではないか。
 沖縄の人が怒っているのは、このような差別意識であり、人として尊重されないことであり、犯罪の多発であり、犯罪がきちんと処罰されないできたことである。
 地位協定の改正は必須である。そして、沖縄・辺野古に新基地建設はいらない。基地の縮小、基地をなくしていくことこそがなされなければならない。
 五月二六日、参議院議員会館で、「女たちは怒っている! 沖縄女性殺害に関する緊急集会」を開き、糸数慶子さんの現地報告、米軍の性暴力のサバイバーのジェーンさん、落合恵子さんらに話をしてもらった。
 性暴力は終わりにしなければならない。




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