福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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死刑を廃止しよう
〈『部落解放』2016年12月号〉

 

 狭山事件は、一審が死刑判決、二審が無期懲役、そして、無期懲役が確定して、石川一雄さんは服役。仮出獄で出所し、現在、再審開始を求めて闘っているのは、みなさんご存じのとおりである。もし、一審判決に対して石川さんが上訴せず、死刑判決が確定し、執行されていたら、とりかえしがつかない、残酷な、とんでもないことになっていた。ぜひ、死刑の問題としても、一緒に考えてほしい。
 国家による殺人には二つある。戦争と死刑である。この二つは、法律にのっとって行われるものである。予告された殺人である。わたしは、戦争にも死刑にも反対である。人が殺されることは、なんとしてもなくしたい。殺人をできるかぎりゼロにしたい。
 人が、かっとなって、衝動的に人を殺すことをできるかぎりなくしたい。そして、国家による殺人は、政治によって、みんなの決意、民主主義によってなくすことができる。
 わたしたちは、民主主義によって国家にさまざまなものを託している。しかし、殺人を託していないし、託してはいけないと思う。
 憲法は、国家権力を縛るものである。日本国憲法九条は、戦争を禁止している。そして、わたしは、日本国憲法はもう一つの国家による殺人を禁止していると考える。日本国憲法三六条は、残虐な刑罰を禁止している。また、一三条は、生命、自由、幸福を追求する権利は最大の尊重を必要とするとしている。政府は強大な力をもっている。しかし、人の命を奪う権限はないのではないか。そして、憲法は人の命を奪うことまで許してはいないのではないか。
 ナチス・ドイツ下のミュンヘンで、戦争反対を訴える大学生のグループ、白バラグループがあった。映画「白バラの祈り」は名作である。こっそり反戦のチラシを配ったり、送ったりしていた。しかし、大学でチラシを置いたことが見つかり、裁判にかけられ、即刻、国家反逆罪で死刑判決を受け、処刑されていく。彼らとわたしにどんな違いがあるのか。国家は、あるときは牙をむいて、人々の命を奪っていくのである。
 政治が暴走するときがある。えん罪事件もある。わたしたちは、政府に人の命を奪うことまで頼んではいないのである。
 わたしの恐怖は、戦争と死刑である。命さえあれば、何とかやっていける。しかし、命を奪われたら、無である。
 一九二九(昭和四)年、治安維持法改正法案の議論で、その違反者に対する刑罰のなかに死刑を入れることについて、帝国議会で反対をする議員たちがいた。その一人が反軍演説で有名な斎藤隆夫議員であった。斎藤隆夫さんは、死刑についてこう言っている。刑罰は人をいじめるものではない。教養を高め、人格を向上させるものである。しかし、その人を殺してしまったら、そのこともできなくなるではないか、と。
 許せない人はいるし、凶悪な人も、理解がとてもできない人もいる。しかし、そのときは凶悪でも、人は変わっていく。また、その人を死刑にして殺しても、その人に殺された人は戻ってこない。殺される人が一人増えるだけである。どんな犯罪も許しがたい。しかし、刑罰は、強姦されたら強姦し返すわけではなく、傷害を受けたら、罰としてその人に同様な傷をつけるわけではない。ところが、殺人は、そのことがあまりに悲しいために、目には目を、殺人に対しては命を奪えというかたちで、死刑制度を維持してしまっている。
 被害者への支援はもっとなされなければならない。受刑者の反省や社会復帰への支援ももっとなされなければならない。どんな人もいずれこの社会に復帰し、ともに生きていくのである。命を奪い、この社会から排除していくということをもうやめたいのである。
 EU(欧州連合)は死刑を廃止し、ロシアもトルコも死刑を執行していない。韓国も死刑は執行されていない。OECD(経済協力開発機構)の国のなかで、国として死刑を執行しているのは、日本だけである。日本弁護士連合会も、人権擁護大会で「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択した。二〇二〇年、日本で世界の刑事司法改革について議論される国連犯罪防止刑事司法会議が開かれる。それまでに死刑制度の廃止を進めたい。もうこれ以上、人の命を奪うのはやめよう。




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