福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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「土人」発言は差別そのもの
〈『部落解放』2017年1月号〉

 

 沖縄の高江の米軍ヘリパッド建設現場付近で、大阪府警の機動隊員が抗議活動をしている人に「土人」と発言したことは、差別そのものである。
 「どこつかんどるんじゃ、ぼけ。土人が」と言ったのである。明らかに差別的な意図をもって、差別的に使われている。上から目線で、相手を侮蔑し、貶め、打撃を与えるために使われているのではないか。
 沖縄の高江の米軍ヘリパッド建設現場には、全国から機動隊が集められている。数字を政府は明らかにしていないが、五〇〇人以上が集められているといわれている。東京、千葉、神奈川、愛知、大阪、福岡の機動隊である。沖縄の高速道路を走ると、なにわナンバーの機動隊の車を見かける。高江で見た機動隊のプレートには、福岡、北九州、足立、多摩、横浜など、さまざまな地名が記されていた。それを見ると、まさに本土が沖縄に襲いかかってきているように感じる。
 私たちは、二〇世紀のときから、人権の二一世紀と唱え、差別や人権侵害がなくなる二一世紀をつくろうとがんばってきたはずだ。それがいったいどういうことだろう。
 私は一九八八年、スイスの国連ジュネーブ事務局で国際人権B規約(自由権規約)の規約人権委員会が日本政府の報告書を審査するのを傍聴していた。こんなふうに日本の人権状況が審査されるのだということに感銘を受けた。そして、北海道旧土人保護法の規定が国際人権B規約に反しているのではないかという議論にも感銘を受けた。
 アイヌの人々を対象とした法律としては、当時、北海道旧土人保護法があった。何とこの法律ができたのは一八九九(明治三二)年である。
 当事者のみなさんやさまざまな方々のがんばりで、この旧土人保護法の廃止とアイヌ新法の成立が実現するのは、一九九七(平成九)年である。どれだけ当事者ががんばり、どれだけ時間がかかったか。
 アイヌ新法が成立する前、一九九六(平成八)年、「ウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会」報告書が出されている。作家の司馬遼太郎さんなどもメンバーであった。
 このなかに「北海道旧土人保護法の取扱い」という部分がある。そのなかで「『旧土人』という用語は今日の社会常識に照らし呼称として不適切であることは否定できないものであ」るとされている。「不適切ではなく差別でしょう」と言いたくなるが、とにかくこの言葉は問題があるとして、法律とともになくなったのである。
 そうであるにもかかわらず、なぜいま復活なのか。私たちは、差別を克服していないし、むしろ差別は助長されている。
 沖縄では、名護市市長選、名護市議会議員選挙、衆議院議員選挙、県議会議員選挙、参議院議員選挙、いずれも辺野古新基地建設反対と訴える人々が勝利している。今年の七月、沖縄県議会が、高江のヘリパッド建設中止を求める意見書を可決している。
 安倍内閣は、そんな沖縄の切実な民意を踏みにじっている。よくいわれるとおり、全国の面積の〇・六%の沖縄に全国の七四%の基地が集中している。これ以上、新基地建設は嫌なのだ、基地機能の強化は嫌なのだという沖縄の声と思いを踏みにじり、工事を強行することは、民主主義の破壊であり、まさに沖縄への差別である。
 政治が差別を行っており、現場の公務員が「土人」という差別発言をする。このことはつながっている。政府は、この「土人」発言を差別だと言わない。
 過去に使われていた言葉であっても、差別は差別である。そして、問題があったからこそ廃止されたのである。歴史を引き戻してはならない。
 戦前は「非国民」という言葉が使われ、人々を恫喝した。「非国民」という言葉で、相手の人権を全否定し、黙らせたのである。戦争や原発推進など、「国策」として強引に進められてきたことが間違っていることなど、多々ある。
 「非国民」に代わる「土人」をはじめとした、さまざまな人々の人権を否定する言葉を許してはならない。




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