福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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よみがえる共謀罪
〈『部落解放』2017年3月号〉

 

 共謀罪法案が、国会に提出されようとしている。
 共謀罪とは、話し合っただけで罪になるというものである。共謀罪法案は、この一〇年間に三回国会に提出され、三回とも廃案になった。それがいま、ゾンビのようによみがえりつつある。とんでもない。
 この法案を「共謀罪」と言ってきたのは政府である。わかりやすい端的なネーミングである。「テロ等組織犯罪準備罪」と名前を変えても、共謀罪は共謀罪。いまさら「共謀罪ではありません」と言っても通用しない。
 わたしたちは、考えや思想信条では処罰されない。犯罪は、既遂になって初めて処罰されるのが原則である。未遂と予備は、重大な犯罪のみ処罰される。たとえば、殺人予備、放火予備、強盗予備などである。殺人目的で拳銃を入手する、出刃包丁を買うなどが、殺人予備となる。共謀罪は、既遂、未遂、予備のずーっと手前の段階で犯罪が成立してしまう。
 人は、具体的な犯罪を犯し、法益を侵害しなければ処罰されない。頭の中でどんなに不埒なことを考えていても、それは処罰できない。頭の中だけのこと、言っているだけのことは、犯罪にはならない。内心の自由や表現の自由があるからである。
 人と人との自由な会話、相談、合意が犯罪になるとしたら、これは思想信条の自由などへの重大な侵害である。
 共謀罪はでっち上げが行われやすいと思う。まだ具体的な実行行為がされておらず、話し合いというものだけが存在するからである。ある人が「こういう話し合いをした」と証言すると、共謀などしていないにもかかわらず、みんなで共謀したことになりかねない。
 いま沖縄では、辺野古・高江の反対運動のリーダーである山城博治さんが拘置所に勾留中である。接見禁止となっていて、弁護士しか会えない。妻も家族も市民も会えないのである。彼は去年一月に、辺野古ゲート前でブロックを積んだことが、威力業務妨害罪であるとして、一一月に逮捕・勾留され、一二月に起訴された。一年近くたってなぜ起訴なのだろうか。
 共謀罪のなかに組織的威力業務妨害罪も入っている。新基地建設反対や原発建設反対、高レベル放射性廃棄物の処分場になることに反対などの理由で、座り込みをしようとみんなで話し合っただけで、組織的威力業務妨害罪が成立するとされる可能性がある。
 建造物損壊罪も共謀罪の対象である。壁にポスターなどを貼り巡らせることが建造物損壊罪といわれることがある。建造物損壊罪は、未遂も予備も処罰の対象ではない。しかし、共謀罪の対象になる。労働組合が、ポスターを貼り巡らせると決めただけで、建造物損壊罪の共謀罪が成立する可能性がある。
 政府は、国際組織犯罪防止条約の締結のために必要だと言っている。しかしこの条約は、マフィア対策などであって、テロ対策ではない。いまさら条約の趣旨をねじまげて、テロ対策だと言うのはごまかしである。また、政府は国内法の整備が必要だとしているが、すでに条約を結ぶ一八七の国・地域のうち、締結に際して新たに共謀罪を設けたところはノルウェーとブルガリアしかない。安倍総理は、東京オリンピック・パラリンピックのために共謀罪が必要であるという。しかし、テロ対策でいえば、日本は国連のテロ関係条約をすべて批准しており、すでに組織犯罪処罰法が制定されている。日本には、爆発物取締法があり、爆発物使用の共謀は処罰可能である。銃器の所持は違法であり、厳しく取り締まられているし、刀剣の携行も、正当な理由がないかぎり、違法となっている。
 わたしには、オリンピックやパラリンピックをテロ対策の口実にして、広く市民や運動に大きな網をかけるために、共謀罪を導入しようとしているとしか思えない。
 戦前、治安維持法が成立するときに、国民から大きな反対の声が上がった。当時の政府は、制限的にしか適用しませんと説明していた。しかし、ご存じのとおり、治安維持法は何度も改正され、結局、六万八〇〇〇人以上の人間が拘束されてしまった。そして、ものの言えない社会ができ、戦争に突入していったのである。
 共謀罪法案の国会提出を許してはならない。




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