福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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なぜいま共謀罪なのか
〈『部落解放』2017年4月号〉

 

 共謀罪法案を国会に提出させてはならない。
 共謀罪法案は、この一五年間に三回提出され、三回廃案になっている。レッドカードである。共謀罪は、話し合っただけで罪になるというものである。犯罪の成立がとてつもなく早くなる。犯罪は、原則として既遂にならなければ処罰されない。未遂、ましてや予備罪は例外的な場合しか処罰されない。刑法犯で予備罪を処罰しているのは七つでしかない。殺人予備、強盗予備などである。殺人のためにピストルなどの凶器を手に入れるなどである。特別刑法を入れても、予備罪は三七しかない。共謀罪の対象になる犯罪は二七七になるという報道がなされている。なぜ予備罪よりも手前の共謀罪のほうが多いのか。ほんとうにおかしい。
 組織的犯罪集団について法務省は、もともと正当な活動を行っていた団体についても、団体の結合の目的が犯罪を実行することにある団体に一変したと認められる場合には、組織的犯罪集団に当たり得るという正式の見解を発表している。そうだとすると、犯罪をするような集団に一変したと警察などが判断すれば、逮捕や捜索が可能となる。この法務省の見解は、市民運動、労働運動、地域運動、会社やサロンであっても、団体の性格が一変すれば対象になると言っているのである。警察が共謀罪の共謀をした団体になったと考えるわけだから、それは団体の結合の目的が犯罪を実行することにある団体に変わったということになる。何ということはない。まったく歯止めにならないのだ。原発反対、新基地建設反対などで座り込みをしようと、みんなで相談する。そのことが組織的威力業務妨害罪の共謀罪の既遂であると警察が考えたら、その団体は犯罪を実行する団体ということになるではないか。
 また、金田法務大臣は、インターネットのラインやメールの一斉送信も共謀罪の対象となると答弁。メールをどうやって見るのか。共謀罪も盗聴法の対象にすることを検討する可能性を法務省は答弁。結局、盗聴しなければラインの会話は見られない。
 そして、捜査のやり方が変わるのだ。強盗や強姦、窃盗などは、被害が発生し、被害届が出されたりして捜査が始まる。しかし、共謀罪の場合は、まだ話をしているだけで、具体的な被害が発生しているわけではない。共謀する可能性があるというまさに予断と偏見で、マークしていくことになるのではないか。屋内盗聴なども捜査の手法として認めろということになるのではないか。
 ところで、安倍総理は、テロ対策で共謀罪をつくらなければ、東京オリンピックを開けないと言う。そんなことはまったくない。共謀罪の根拠にしているのは、二〇〇〇年にパレルモで調印された国際組織犯罪防止条約である。パレルモ条約といわれている。イタリアのシチリア島のパレルモで調印されたのは、この条約がマフィア対策だからである。マネーロンダリングなど、越境性のあるマフィア犯罪を取り締まるものである。だからこそこの条約は、金銭的利益を得る目的というのを組織的犯罪集団の定義のなかに入れている。パレルモ条約はテロ対策と関係がない。条約を批准するために必要だと言いながら、条約はテロ対策のものではないのである。
 他方、日本はテロ対策の条約一三本をすべて批准し、法律もつくってきている。明治時代から爆発物取締法で使用の共謀は処罰している。銃刀法があるので、拳銃を所持することなどもアメリカと違って違法で処罰される。ハイジャックをしようとしている者がチケットを買えば、ハイジャック犯の予備として処罰される。しかし、このことを安倍総理は、予備罪として処罰されないのだから共謀罪が必要なのだと国会で主張した。これは虚偽答弁ではないか。また、予備罪で処罰できないから共謀罪で処罰するというのもおかしい。共謀のほうが予備よりも手前の段階だからである。
 なぜいま共謀罪なのか。安倍内閣は、秘密保護法、戦争法を強行採決し、盗聴法を拡充し、そしていま共謀罪法案を出そうとしている。戦争のできる国にし、日本国憲法を改悪するために、さまざまな運動を弾圧し、人々が話をし、連携し、声を上げていくことを、事前につぶしていこうとしている。わたしたちは、力を合わせて、違う未来をつくっていかなければならない。行為ではなく思想信条を罰し、人と人とのコミュニケーションを破壊する共謀罪法案を提出させてはならない。




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