福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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道徳の教科書を読んでみた
〈『部落解放』2017年6月号〉

 

 森友学園、塚本幼稚園の「安倍首相、がんばれ、安倍首相がんばれ、安保法制が通過して良かったです」の宣誓には度肝を抜かれた。教育勅語を暗唱する姿にも。森友学園の問題は、政治の私物化の問題である。それも、教育勅語を礼賛するようなお仲間への便宜供与である。森友学園、加計学園問題の徹底追及をやらなければならない。
 ところで、道徳が教科になり、検定教科書ができ、成績で評価されることになった。パン屋さんがなぜか和菓子屋さんになって、日本の文化・伝統の重視ということで、検定OKになった。
 小学生の道徳の教科書の検定前、検定意見、検定後を読んでみた。
 まず、礼儀の強調。座り方、あいさつの仕方など、図入りで丁寧に指導している教科書がある。
 「立ったしせい」「すわったしせい」「おじぎのしかた」が写真付きで指示されている。検定で、「正しいしせい」が「れいぎ正しいしせい」に変えさせられている。礼儀正しい子どもをつくるということか。
 会話についても、「おともだちをさそうとき」「へんじをするとき」に「あいてのかおを見よう」など注意が並ぶ。シャイな子どももいれば、面と向かって言えないこともある。百人いれば百通り、そして百の場面がある。道徳の教科書に共通しているのは、こうすべきという鋳型にはめようというもの。発達障害の子どもなど鋳型にはまらない子どもは、「変わった子」「困った子」「できない子」として差別を受けることにならないか。
 家族の強調ということもある。「おじいちゃんだいすき」「おとうさんだいすき」という章のある教科書もある。なぜ「おかあさんだいすき」ではないのだろう。学習指導要領に、「父母、祖父母を敬愛し、家族みんなで協力し合って楽しい家庭をつくる」とある。
 しかし、当たり前だが、問題のある家庭はある。児童虐待があったり、親から性暴力を受けたりしている子どももいる。おかあさんはおとうさんから、暴力を受けているかもしれない。明るい家庭をつくれと言われてもできない場合がもちろんある。子どもに明るい家庭をつくれと言うのではなく、子どもの環境を整えることこそ、大人の政治の責任である。道徳で「父母、祖父母を敬愛しろ」「おじいちゃんだいすき」「おとうさんだいすき」という章を設けても、子どもにとって残酷な場合があるのではないか。そして、虐待を受けている子どもが往々にしてそうであるように、「自分が悪い子だからこうなるのだ」と、ますます思うのではないか。
 驚いたのは、「職員室の入りかた」の記述。「目上の相手に接するときに、気をつけなければいけないことは、なにがあるかな」と、「目上」という言葉が検定で入った。「目上」「目下」とは、人と人との関係を、上下関係にするものである。無礼でないかぎりいいではないか。
 道徳の教科書は、子どもたちを元気のいい子どもとして描かない。早寝、早起き、朝ごはん。鋳型にはめ、秩序のなかで生きるように仕向けているように思える。
 また、「国旗や国歌を大切にする気持ちのあらわし方」として「き立して国旗にたいしてしせい」を正し、「ぼうしをとって、れいをします」などと書かれている。道徳のなかで、国旗・国歌を事実上強制していないか。「国旗・国歌法」制定当時、政府は、「教育現場での強制は考えていない」と述べていたが、道徳で、振る舞い方も含め、しっかり指導している。
 自民党の改憲案は、「天皇を戴く」と前文に書き、天皇を「元首」としている。そして、二四条を「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」としている。一三条の「個人としての尊重」は、「人としての尊重」に変わっている。個人の尊重など嫌なのである。最小単位は家族であり、郷土、国を愛すると続く。人々は、ピラミッド構成の秩序のなかで、感謝して生きろ、ということではないか。子育てしてきて面白かったのは、子どもによってこちらの価値観や感性が揺さぶられ、変わっていくことである。とんでもない子、はしゃぐ子、元気な子、思いもかけないことを言う子などがいるからこそ面白い。道徳の教科書がつくろうとしているのは、「目上」の大人にとって都合のいい、いいなりになる子どもではないか。こんなの、主権者が国民であり、一人ひとりがかけがえのない存在として大事にされるということに反するのではないか。子どもたちをとんでもない政府から守ろう、子どもたちよ、存分に生きていけと言いたい。




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