福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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憲法九条に自衛隊を明記?
〈『部落解放』2017年7月号〉

 

 安倍総理が五月三日、読売新聞で、二〇二〇年までに憲法九条を変えて施行するとインタビューに答えた。九条一項と二項はそのままにして、三項を入れ、自衛隊を明記すると述べた。大変なことである。
 まず、憲法改正の発議は国会にある、総理や内閣にはない。総理には、憲法九九条で憲法尊重擁護義務がある。「国会の議論にまかせる」としか言えないはずである。それを総理が、期限を区切って、憲法九条を変えると項目を示して発言することは、三権分立を壊すものである。
 そして、国会で質問された総理は、「読売新聞を読んでください」と答えた。新聞のインタビューには答え、発言しているのに、国会で質問されると答えない。これも二枚舌の、ひどい態度である。
 国会は、政府を、内閣をただすところである。強大な権限をもつ政府、内閣に対して、チェックをし、ただし、提言をするのが国会である。国会で答えられないのであれば、インタビューでも答えるべきではない。突っ込まれないメディアのなかでは、自分の見解を十分に話し、一方で国会では、野党から細かく質問され、反論されることは大嫌いで、答弁を拒否する。国会を何だと思っているのだろう。
 国会は、主権者である国民によって選ばれた議員がいる国権の最高機関で、国会で説明するということは、国民に説明するということだ。安倍首相は、そんな感覚はゼロである。元首か皇帝のように振る舞っているのではないか。
 安倍総理は何をしたい人か。ただひとつだけやりたいことがある。憲法を変えることである。しかも、戦争をしないと決めた九条を、である。安倍総理の「戦後レジームからの脱却」とは、日本国憲法からの脱却であり、憲法九条からの脱却である。TPP(環太平洋経済連携協定)も、アベノミクスも、一億総活躍も、女性の活躍も、働き方改革も、それぞれ経団連や大企業、国民の支持を取り付けるための政策か、国民をだますキャンペーンでしかない。
 二〇二〇年までに憲法九条を変えて施行するということは、二〇一八年か一九年に憲法を変えるということである。
 いま総理は、来年九月に自民党総裁として三期目当選をはたし、憲法九条を変えようとしている。安倍総理の個人的執念と妄想に国民はもう付き合ってはならない。
 安倍総理は、憲法九条に新たに三項として自衛隊を明記すると言う。この「自衛隊」「自衛権」は、集団的自衛権の行使をするものである。
 安倍総理は、二〇一五年、安保関連法、戦争法を強行採決させた。法律家のほとんどが、そして、安倍総理以前の内閣はすべて、集団的自衛権の行使、つまり、自分の国が攻められていないにもかかわらず、他国と一緒に世界で戦争をする、武力行使をすることは違憲であるとしてきた。自民党政権は、集団的自衛権の行使は違憲であるとしてきたのである。
 しかし、安倍総理は、たとえばアメリカとともに海外で武力行使をすることは合憲であるとして、安保関連法、戦争法を強行採決した。全国各地で、安保関連法、戦争法に対して違憲訴訟が提起されている。憲法九条があるにもかかわらず、九条を踏みにじったのである。
 「順番が逆でしょう」と言いたい。違憲の安保関連法、戦争法をつくり、これを合憲化するために九条に三項を入れる。
 九条一項、二項は、他国で戦争をすることを違憲とする。三項は、一項、二項を破壊するのである。憲法九条に三項を入れるということは、日本が、戦争をしない国から戦争をする国に変わるということである。
 これは、日本国憲法を根本から破壊するものである。日本は、三〇〇万人の日本人の死者、二〇〇〇万人以上といわれるアジア各国の死者、そして、それ以上の戦争犠牲者の、それこそ犠牲の上に日本国憲法、平和憲法を手にした。海外で日本の若者が戦争をし、殺し、殺されることをしないと決めたのである。
 その根本を壊させてはならない。




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