福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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性別の変更は人権だ
〈『部落解放』2017年10月号〉

 

 ハーヴェイ・ミルクのドキュメンタリー映画を見たのは一九八八年である。ほんとうにショックを受けた。ハーヴェイ・ミルクは、ゲイをカミングアウトして議員になった、アメリカで最初の議員である。サンフランシスコ市の市議会議員だったが、同僚の議員に射殺される。まさにヘイトクライム。四八歳で生涯を終える。ゲイであることで射殺されたり、ゲイバーが襲撃されたりするのだと、ショックを受けた。ゲイであることだけで、すさまじい暴力にあい、殺される。自分らしく生きることが実に困難で、差別や憎悪の対象となり、命すら脅かされるのである。
 LGBTとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーを指している。LGBT以外にもさまざまな性の多様性があるので、最近は、SOGI(セクシュアル・オリエンテーション アンド ジェンダー・アイデンティティ)、つまり、性的指向と性自認と呼ばれていたりする。LGBT差別解消法案を野党で国会に出しているが、まだ成立していない。
 今回は、とくにトランスジェンダーのことを書きたい。
 「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が成立したのは、二〇〇三年である。当事者の人たちの必死の努力で成立した。
 生物学的には男性であるけれども、本人の性自認は女性であるという場合、逆に、生物学的には女性であるけれども、本人の性自認は男性である場合などがある。家庭裁判所が、性別の変更の審判をする。認めてもらうためには、二〇歳以上であること、現に結婚をしていないこと、現に未成年の子がいないこと、生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること、性器が近似する外観を備えていることが必要である。
 保険適用の利かない手術をし、たとえば、子宮をとり、性器の外形を変えなければならない。費用が多額にかかり、もちろん体の負担も大きい。それでやっと性別の変更ができる。全国を歩いていると、このことが大きな負担であるとの声を聞く。
 そこで、外国の大使館の人たちに外国ではどうかと話を聞いている。デンマークでは、一八歳になれば、本人がメールで申請するだけで性別の変更ができる。ノルウェーでは、一六歳になれば、本人が書類で変更申請を行うことができる。これにより医療機関の受診や手術は不要である。一六歳以下の場合は、本人と親権を持つ者の少なくとも一人で申請を行うことができる。公立病院であれば、ホルモン治療も含め、手術や治療は無料である。
 ノルウェーの大使館の人の言葉が印象に残っている。「個人のアイデンティティの問題であり、人権問題だ」ということである。
 本人のアイデンティティをとにかく大事にする。本人が自分らしく生きることをそのまま応援するということである。
 それにしても、本人の意思だけで、通知をすれば性別の変更ができるということは新鮮な驚きである。自分の性自認に従って、体も変えたいという人はもちろんいる。しかし、どこまで変えるかは本人に委ねられている。内臓までとり、性器を変えなければ変更が認められない日本とは、あまりに大きな違いである。たしかに、更衣室やトイレをどうするなどの問題は生じるかもしれない、しかし、本人のアイデンティティ、人権が大事なのだというノルウェー大使館の人の発言に意を強くした。
 ほとんど女性になっているけれどもまだ戸籍上性別を女性に変えていない人と、法務省と行政交渉をした。このような場合は、その人が罪を犯せば男性の刑務所に行くのである。どう見ても女性にしか見えないので、よけい混乱が生じるのではと思った。
 本人のアイデンティティが大事というのを聞きながら、マリリン・モンローの「お熱いのがお好き」という映画の最後を思い出した。ジャック・レモンが、「男だって女だってどっちだっていいじゃないか」と言い、自分の頭の女性のかつらをバーンと取るのである。そうなのだ。いいじゃないの、幸せならばと言いたくなる。




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