福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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食べられるだけの賃金を
〈『部落解放』2017年12月号〉

 

 「三〇代で二歳の子どもがいます。最低賃金を一五〇〇円に上げるようにしてください。お願いします。そうでないと暮らしていけないのです」
 これは、最低賃金を一五〇〇円に上げるなどに取り組む若者グループ「エキタス」の新宿での街頭演説に参加して演説したときに、会社員から訴えられた言葉である。
 衆議院選挙の応援で全国を回っているときにも、たくさんの人に声をかけられた。若者に「最低賃金一〇〇〇円の実現、一五〇〇円をめざすという公約を支持します」と言われた。博多駅での街頭演説でも「最低賃金を上げてほしい。時給で暮らしているので」と言われた。
 いま、年収が二〇〇万円以下の人が一六〇〇万人である。この一〇年間で、そして、この五年間で、パート、派遣、契約社員の人たちが増え、正社員が減った。労働者派遣法は、専門的な仕事で、期間と業種を限るということでスタートしたが、小泉政権で改悪され、安倍政権のもとで、一生涯派遣が可能、業種の枠がなくなった。
 いま、パート、派遣、契約社員など、非正規で働く人たちが四割になっている。公務員も非正規雇用の人が増えている。図書館で働く人、保育士さん、先生、ハローワークで働く人、事務をする人など。非正規雇用で不安定であること、更新されないのではないかと不安を抱えること、正社員と同じ仕事をしているのに待遇があまりに違うことなど、たくさんの人に悩みを相談される。
 シングルマザーの平均年間就労所得は、一八六万円である。児童扶養手当などの制度があるので、これだけが収入ではないが、女性が働いて、子どもを食べさせるだけの賃金を得ることが困難な社会なのである。国立大学の授業料は、年間五四万円。子どもを大学に入学させることはほんとうに困難である。高校の校長をしていた人から、大学に合格しても、入学金や授業料を納めることができなくて、入学を辞退する子どもたちの話を聞いた。親の実質賃金が下がっているし、大学の授業料などが上がっているので、いまや大学生の半分が奨学金を利用し、平均して三〇〇万円以上の借金を抱えている。高校生や大学生は生活のためにアルバイトをしている。
 最低賃金を上げ、食べられるだけの賃金を保証することこそ必要である。
 長時間労働の規制は必要である。しかし、時間給で働いている人は、長時間労働の規制だけでは、単純に収入減となってしまう。正社員化への道の拡大、長時間労働の規制をすると同時に、食べられるだけの賃金の確保が大事である。
 最低賃金は、今年の一〇月以降、少し上がった。東京は、九三二円から九五八円になった。しかし、神奈川が九五六円、大阪がようやく九〇〇円超えの九〇九円であり、ほとんどの県は七〇〇円から八〇〇円台である。九州は福岡以外の県は七三七円である。一日八時間働いて五八九六円、月二〇日働いて一一万七九二〇円である。
 どうやって最低賃金を上げるか。
 公契約条例、公契約法はひとつの手段である。関東の自治体を中心に公契約条例が広がっている。公共事業を受注している企業の条件についての条例である。東京の世田谷区にも公契約条例があり、今年、公共事業を受注している企業で働く人の最低賃金が一〇二〇円となった。一〇〇〇円超えである。公共事業を受注する企業に限られるが、下請けで働く建設労働者や障がい者の就労施設で働く人なども一〇二〇円以上になった。
 公契約法も国会でつくり、賃金の底上げをしていきたい。
 一般的に最低賃金を一〇円上げると、そこの地域で数億円の内需拡大ができるという試算を読んだことがある。地域経済の活性化のために最低賃金を上げることは有効である。
 そして、中小企業の支援が必要である。経産省や中小企業庁も駆け込み寺の仕組みをつくり、生の声に耳を傾け、対策を取ろうとしはじめた。ダンピング防止やさまざまな対策、政策が必要である。
 働いて、食べられるだけの、子どもを食べさせることのできる賃金を! ぜひ一緒に取り組みましょう。




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