福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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子どもを暴力から守ろう
〈『部落解放』2018年1月号〉

 

 ずいぶん前だが、法務委員会の視察で、女子少年院の見学に行ったことがある。施設の人から、女子たちのなかには、実父や義父などから性暴力を受けた少女が少なからずいるという話を聞いた。家にいることができず、盛り場などを彷徨するしかないのだという話を聞くこともある。
 父親に一三歳のときから性暴力を受けてきた山本潤さんの本『13歳、「私」をなくした私―性暴力と生きることのリアル―』(朝日新聞出版刊)を読み、ご本人と対談した。この本は、山本潤さん自身が、自分自身と被害に真摯に向き合い、自分に起きる困難や困惑、被害を真剣に見つめて、書いたものである。それにしても、性暴力の被害は、これほど深くその人を傷つけ、生きる力を奪っていくのか。何年経っても、何十年経ってもその人を深く傷つけつづける。
 私のまわりにも、実の父親から性暴力を受けつづけた女の子(いまは大人になっているが)たちがいる。加害者は、何も責任を取らされていないし、訴えられてもいない。本人だけが苦しみつづけている。性暴力だけではなく、子どものときに受けた暴力が、その人を苦しめつづけていることがある。
 学者の安冨歩さんと話していたら、「すべての子どもをあらゆる暴力から守れば、すべての問題が消滅するはずです」とおっしゃった。
 すべての子どもをあらゆる暴力から守るためには、想像を絶するほどのことをしなければならない。戦争もテロも難民になることも、家庭のなかの暴力、学校のなかの暴力も、施設のなかでの暴力もなくさなければならない。肉体的な暴力だけでなく、精神的な暴力も子どもたちの魂を傷つける。鋳型にはめようとすることも。すべての子どもをあらゆる暴力から守ることは大変である。しかし、そのことで、急がば回れ、暴力で問題を解決しない社会をつくることができる。また、一人ひとりが尊敬され、大事にされることこそもっとも大切なことである。
 兵庫県川西市には、子どもオンブズパーソンがある。見学したことがある。また、先日、世田谷の「せたがやホッと子どもサポート『せたホッと』」を見学した。弁護士などもいて、スタッフが電話やメール、面会などで相談を受け付ける。相談できる、相談できる場所があるというだけで、どれだけ心の支えと安らぎになるだろうか。
 最近起きた座間の事件に、ほんとうにショックを受けている。被害にあった女性たちは、ツイッターなどに「死にたい」と書き、ターゲットにされている。「死にたい」っていうのは「生きたい」ということである。死にたいと書きながら、人とのつながりをもとうとしている。一〇代の後半、二〇代、三〇代の死因のトップは自殺である。病死ではなく、事故死ではなく、自殺がいちばん多いのである。何という社会だろうか。
 働く人のうち、非正規雇用が四割を超し、年収二〇〇万円以下の人が一千数百万人である。高校生、大学生のブラックバイトも大問題である。大学生の五四パーセントが奨学金を受けており、平均して三〇〇万円以上の借金を背負っている。
 先が見えないと多くの若者は思っているだろう。身近な大人たちも余裕のない働き方、生活をしている。将来にもなかなか希望を見いだすことができない。
 なぜ少なくない人は、自分は大事な存在なのだと思うことができないのか。そう思うことができる社会をつくれていないのか。
 子どもを育ててみると、子どものすさまじい成長力に驚く。パワーにも驚く。そして、回復力も大人よりはるかにある。子どもたちにもっともっと手を差し伸べることができれば、大人になって癒されるよりずっと早く回復するだろう。保育園や幼稚園に行くと、どの子も楽しそうにキラキラしている。どうして、このキラキラをみんながもちつづけて、大人になることができないのだろう。いったいどこで「自分はダメな子だ」と元気がなくなってしまうのだろう。
 「世の中、甘いもんじゃないよ」という声が聞こえてきそうである。
 しかし、社会が子どもを応援しなくてどうするのだ。子どもでなかった大人などいない。そして、どんな大人のなかにも子ども時代の子どもが住んでいる。すべての子どもをあらゆる暴力から守ることを政治の、社会の重要課題として多くの人と取り組みたい。




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