福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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気持ちよくて、平等で、愉快
〈『部落解放』2018年3月号〉

 

 内田樹さんの『困難な結婚』(アルテスパブリッシング刊)を読んだ。違う意見のところもあったが、おもしろい本だった。
 そのなかで、とくに印象に残っているのが、「蟹は自分の甲羅に合わせて穴を掘る。政治組織だって同じです」「『自由で民主的で平等で、みんなが愛し合い、尊敬しあっている社会』を実現するための政治組織は、今ここですでに『自由で民主的で平等で、みんなが愛し合い、尊敬しあっている組織』であるはずです。そうでなければならない。そういう組織でしか、『自分の甲羅と同じ模様の社会』を作り出すことができない」というところだった。
 よく言われることだが、気持ちよくて、平等で、愉快な社会をつくろうと思ったら、自らの組織も、運動もそうでなければならないということである。  いまあるものの拡大しかできない。
 もちろん、二人で生きる結婚の大変さ、ノウハウも書かれている本なのだが、たくさんの人がかかわる集団で、気持ちよくて、平等で、愉快ということはなかなかできない。しかし、そのようなものであろうと努力することはできる。
 こんなことを書くのも、安倍政権が五年続き、まさに二〇一八年、憲法改正の発議がされるのではないかという状況を迎え、もうファシズムの到来か、いやもう突入しているかという重苦しい社会になっていると感じるからである。
 辺野古新基地建設反対のオール沖縄の声を政府はまったく聞こうともせず、工事を強行している。高江・辺野古のリーダーである山城博治さんは、刑事裁判にかけられている。運動に対する弾圧ではないか。政府の政策に異を唱える人は弾圧され、政権になびく人は優遇される、そんな社会は息苦しい。
 だからこそ、この社会を少しでも生きやすくするための運動は、気持ちよく、愉快で、楽しく、みんなを元気にするものにしたいとつくづく思う。沖縄の人と話していると、「勝つための方法は、相手よりも一日多く闘うことだ」という意見を聞くことがある。たしかにそのとおり。それならやれるような気がする。また、歌を歌ったり、踊りを踊ったり、そんなことでも元気になる。
 最近、「NO」という映画を見た。
 一九七三年、チリの軍人ピノチェトが軍事クーデターを起こし、選挙によって選ばれていたアジェンダ政権を倒す。長い独裁政権。三〇〇〇人以上の人間が誘拐、殺害、行方不明となった。多くの人が亡命。ちなみに社会主義インターのアヨロ事務局長は、このとき亡命したチリの弁護士である。一九九〇年、国際的な批判もあり、ピノチェト政権は信任の国民投票を行い、信任を得ようとする。独裁政権なので、メディアは完全に政府に牛耳られている。反対派と賛成派に夜中一五分間ずつ、毎晩CMを流すことが許される。反対派(NO)の側はどうやってみんなにアピールするか。
 たくさんの人が弾圧され行方不明になっているというCMをつくるべきかどうか。結局、独裁が去れば明るい未来がやってくるといった、明るい、ポップで、元気なCMをつくり、流す。希望と元気をみんなに与え、どうせ変えられないというあきらめではなく、政治と未来は変えられるという明るいメッセージにすることになった。
 NO派が勝つ。そして、軍事独裁政権は退陣する。
 すばらしい。憲法を変える国民投票をすれば、安倍総理はボロ負けするという状況をつくり、発議そのものを止めたいのだ。あきらめや失望、絶望ではなく、希望をつくっていくという点で参考になる映画だった。表現の自由がどんどん狭められていくような状況、萎縮していくような状況、嘘も一〇〇回言えば、みんなが信じるといった政治手法が横行するなかで、未来を示し、どう変えていくのか。
 間違いなく私たちは、困難なところにいる。憲法九条が変えられるかもしれないという危機的なところにいる。だからこそ知恵を絞り、笑い、励ましあって、愉快に、やっていきたいものだと思う。




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