福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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優生保護法下の強制不妊手術
〈『部落解放』2018年4月号〉

 

 優生保護法下での強制不妊手術について、先日、仙台地方裁判所に裁判が提訴された。
 優生保護法は一九四八年に成立し、一九九六年、母体保護法に変わるまで法律として猛威を振るった。ナチス・ドイツの断種法は、一九三三年に成立するが、一九四五年にはなくなっている。日本国憲法下で、強制不妊手術が行われていたことはほんとうに重い。
 優生保護法は一条で、この法律の目的として、「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」としている。そして四条で、強制不妊手術の規定を設けている。医師は、「その疾患の遺伝を防止するため優生手術を行うことが公益上必要であると認めるときは」、都道府県優生保護審査会に優生手術を申請し、優生手術を行うのである。全国で計一万六五一八人がこの手術を受けている。一九五〇年から一九六〇年代で強制不妊手術全体の九割を占めている。
 法律に別表としてさまざまな疾患が書かれている。これを見るとほんとうに驚く。遺伝性精神病として、精神分裂病、そううつ病、てんかんが入り、遺伝性精神薄弱、顕著な性欲異常、顕著な犯罪傾向とある。また、血友病や遺伝性の難聴又はろうなども入っている(表記は法律のまま)。
 まず、遺伝性であれば、なぜ子どもが持てないようにされてしまうのだろうか。九歳で手術を受けさせられた子どもがいる。そして、次の問題は、遺伝性などの認定がきわめてずさんということである。
 そううつ病や精神薄弱をどうやって遺伝性と認定するのだろうか。非科学的なことが行われていたとしかいいようがない。当時の差別や偏見をそのまま強制不妊手術につなげたのである。
 各地での、審査会の議事録などが残っている。一九七八年、鳥取県での審議では、「バカは(原文のまま)産んでもらっては困ると言うことが公益性」という発言に異議が出ていない。子どもを産んでも育てられないという意見も出ている。  遺伝するかよくわからなくても、厳密に考えられてはいない。法律もそうだし、実際の適用でもそうだ。
 一九九六年、この優生保護法は母体保護法と改められたが、当時、強制的に行われた不妊手術の実態は明らかにされていないし、何らの補償も謝罪もされていないのである。
 女性差別撤廃委員会は、この点について「実態を調べ加害者を訴追し、全ての被害者に法的な救済や補償を提供する」(二〇一六年)よう勧告を出した。二〇一六年三月、私は塩崎厚生労働大臣に対し、当事者と厚生労働省が会ってほしいと質問した。大臣はそうすると約束し、六回のヒアリングが行われ、そのなかでさまざまな資料も出てきた。当事者の話も何度も聞いてきた。一言でいえば、すさまじい差別と偏見である。
 本人が子どもを持ちたいと思えば、子どもを持つことは当然の権利である。子どもを持つか持たないかということは、本人が決めることであり、本人の幸福追求権に属することである。日本国憲法が一三条で、幸福追求権や個人の尊重を決めているにもかかわらず、日本国憲法のもとで、逆に優生保護法ができ、このような手術が行われていたことが重大である。明確な憲法違反である。
 優生手術をされることがどういうことか、本人もよくわかっておらず、説明もされていない。そもそも小さな子どもがそのことを理解できるわけがない。そして、私は思うけれども、昔は、女性は結婚して子どもを産んで一人前と考えられていた。子どもを産むことが当然と考えられていたのである。しかし、子どものときに受けた手術で、もう子どもを持つことができないのである。残酷なことである。社会の優生思想や偏見のなかで、まるで罰のように本人は子どもを産むことができないようにされたのである。
 相模原のやまゆり園の事件は、私たちの社会に根深い優生思想があることを痛感させた。優生思想をほんとうに克服しなければならない。私たちの社会にはまだまだ根強い根強い優生思想がある。
 この優生保護法の強制不妊手術について、超党派で議員連盟を立ち上げ、実態調査やヒアリングをし、法律をつくり、救済までしたいものだと考えている。一緒にぜひこの問題を考えてください。




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