福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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働き方改悪法案

〈『部落解放』2018年7月号〉

 

 通常国会で働き方改革一括法案が審議されている。働き方改革一括法案のなかに、裁量労働制の拡充と高度プロフェッショナル法案も入ってしまったので、大問題となっている。
 裁量労働制の拡充と高度プロフェッショナル法案(もともとは、ホワイトカラー・エグゼンプションと言っていた)は、第一次安倍内閣のときに、多くの人の反対で断念に追い込まれた。いままで三回国会に上程されて、三回とも廃案になっている。にもかかわらず、今回、働き方改革一括法案のなかにこの二つが盛り込まれた。働き方改革法案は、働き方改悪法案になってしまったのである。
 国会では、総理も厚生労働大臣も「裁量労働制のほうが、一般労働者より労働時間が短い」という答弁を繰り返した。それはいくら何でも違うでしょうという疑惑が提起され、実際、データを検証すると、データが間違っていることが明らかになった。法案を成立させるためにデータが捏造されたのではないかという疑惑が起こっている。厚生労働大臣は、裁量労働制についてのデータを撤回し、裁量労働制の拡充は、働き方改革法案から削除した。
 しかし、一方の高度プロフェッショナル法案、いわゆる過労死促進法案のほうはしっかり残っている。平均年収の三倍程度(現在は一〇七五万円くらいと言われているが)であれば、一切の労働時間規制がなくなるというものである。年収一〇七五万円なんて関係ないと思う読者も多いだろう。しかし、経団連が二〇〇五年に出した「ホワイトカラー・エグゼンプションに関する提言」では、年収が何と四〇〇万円以上と提言されているのである。ホワイトカラー・エグゼンプションを小さく産んで大きく育てる、と経営者に語った厚生労働大臣もいる。年収要件はだんだん下がり、ほんとうに四〇〇万円になるのではないか。
 この過労死促進法案では、一定の年収があれば、一切の労働時間の規制がなくなってしまう。労働時間も休日も休憩も深夜業の規制もなくなる。割増賃金という概念もなくなってしまう。
 現在、管理監督者でも深夜業の規制はある。夜一〇時から朝の五時まで働かせれば、深夜業の割増賃金を払わなければならない。しかし、高度プロフェッショナル法案では深夜業の規制もなくなる。月に二〇〇時間残業しようが合法である。二四時間、二四日間働かせつづけても合法である。ありえない。労働時間規制が一切ない労働者が、初めて誕生してしまうのである。私たちが、過労死促進法案、残業代ゼロ法案、定額働かせ放題法案、子育て妨害法案、家族解体法案と言い換えている理由である。先日、二八歳のIT企業で働く男性が、クモ膜下出血で亡くなり、過労死の認定を受けた。彼のツイッターには、三六時間働きつづけたとか、気がついたら朝の六時だったという文言があった。三六時間も連続して働いて、体によいわけがない。
 高度プロフェッショナルとは、三六五日、二四時間、自己責任で働けということである。しかし、仕事の量は選べないし、納期や仕事の量も使用者の指揮命令を受ける。真面目で責任感の強い人ほど無理して働くだろう。人間は機械ではない。まだ、機械のほうが保守点検を受ける。使い捨てのボロ雑巾のように働かされるだろう。給料は定額で。使用者にしてみれば、割増賃金を払わなくてよいのだから、目いっぱい働かせるだろう。人間には、命があり、生活があり、家族がいて、子どもがいることがあるということが忘れられている。
 そして思うのだが、上司がこのような極端な働き方をしているときには、部下も巻き込まれ、サービス残業をさらにすることになるのではないか。
 安倍総理は過労死を考える家族の会との面談を拒否した。なぜ切実な声を聞かないのか。そして、安倍総理は、経団連の幹部とは会食をしている。だれのための政治なのか。コストカットのための法案ではないのか。働く人のだれが望んでいるのか。国会で過労死を生むような法案を成立させてはならない。国会の責任は重大である。廃止できるよう多くの人とがんばりたい。




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