福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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安倍政権とドメスティック・バイオレンス

〈『部落解放』2018年8月号〉

 

 セクシュアル・ハラスメントやパワハラ、ドメスティック・バイオレンスやいじめなどは、人の生きる力を奪う。弁護士として多くの離婚事件を担当するなかで、これまた多くのドメスティック・バイオレンスの事件を見てきた。顔が腫れたり、骨折したり、あざができたり、さまざまである。そして、身体的な負傷ばかりではなく、精神的にダメージを受け、力を奪われる。
 差別って何だろうと考えたときに、人の生きる力を奪うものであると思う。たとえば、一〇年間、「あなたには力がある」「あなたはすてきだ」「あなたのこういうところがとってもいい」と言われつづけるのと、一〇年間、「気がきかない」「役に立たない」「お前はほんとうにだめなやつだ」「だれも相手にしない」と言われつづけるのでは、心のあり様も、顔つきもまったく違ってくるだろう。後者は、励ますのではなく、力を奪っていくのである。
 なぜセクハラやドメスティック・バイオレンスが起きるのか。「女のくせに」「おれの女だ」「言うことを聞くはずだ」「どうにでもなる」と加害者が思っているのである。そこには、構造的な差別がある。
 ドメスティック・バイオレンスを受けていて、なぜ離婚をしないのか。なぜ逃げないのかと思う人もいるだろう。子どもがいる、離婚して経済的にやっていけるか自信がない、まだ愛している、自分が我慢すればやっていける、過去を断ち切って人生を根本から変えることへの不安、自分の人生は失敗だったと認めることの恐怖など、さまざまな理由からなかなか決断できない。そして、きょう暴力を受けないためにどうするかということに神経が注がれる。
 ドメスティック・バイオレンスは、支配の構造である。相手を暴力という恐怖で支配し、「自分は無力で、価値がない」と思わせ、力を削ぎ、違う未来を実は選択できるのだと思えなくしてしまう。ほんとうは、力があり、違う未来を選択できるのに、あきらめさせられて、できないと思わせられているのである。だから、ドメスティック・バイオレンスの根本原因である女性差別を根絶しなければならないし、支援を強化しなければならない。
 ところで、私は、いまの安倍政権の構造は、ドメスティック・バイオレンスの構造に似ていると思っている。自分の政策にNO!という沖縄などへは、問答無用で、辺野古の新基地建設を進めている。高江のヘリパッド建設のために全国から機動隊を送り込む。運動のリーダーである山城博治さんは、逮捕され、長いこと勾留された。現在、保釈されているが。
 メディアや教育への支配や介入が進んでいる。キャスターであった岸井成格さん、国谷裕子さん、古舘伊知郎さんは、同じときに降板させられた。NHKのなかで、報道番組に上司から圧力があったとの内部告発もあった。前文科事務次官の前川さんが行った授業に対して、自民党の議員からの問い合わせを受けて文科省が問い合わせを行った。道徳が教科になり、今年の四月から小学生が検定教科書で勉強している。家族を愛する、郷土を愛する、国を愛するという中身になっている。子どもたちを鋳型にはめ、秩序のなかで生きさせようとしているのではないか。
 国会では、公文書の改ざんと虚偽答弁が横行し、にもかかわらず、だれも起訴すらされていない。  安倍内閣は何をしようとしているのか。国民に無力感を与え、「仕方ない」と思わせようとしているのではないか。ドメスティック・バイオレンスの構造を思い出す。主権者である国民は、政治のあり方を決めることができ、未来を変えることができる。よく「一パーセント対九九パーセント」という言われ方をするが、一パーセントの富裕層より、九九パーセントのほうが人口は多いし、選挙では本来勝つはずなのである。主権者である国民は、ほんとうは力があり、政治を、社会を変えることができる。しかし、無力だと思い込まされている。いや、思い込まされようとしている。虚偽答弁も、文書の改ざんも、政治の私物化も、とんでもないのである。
 私たちは、支え合い、語り合い、伝え合い、力をお互いに与えて、私たち主権者が未来をつくれるのだということを示していきたいと思う。




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