福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

「参議院議員・弁護士 福島みずほのWebsite」はこちら



 

だれのためのIR実施法?

『部落解放』2018年9月号

 

 国会でIR事業実施法が残念ながら成立した。IR事業実施法と言っても、なかなかわからない。カジノ法と言っても、よくわからない。バクチ法、あるいは、バクチ解禁法である。
 民間がバクチで金儲けをするのに、なぜ刑法の賭博罪、賭博開帳図利罪が成立しないのか。自治体がやっている競輪などは、収益から経費を除いて、すべて税金に使われ、住民のために使われる。そのため、正当行為として違法性が阻却される、つまり、違法性がなくなるとされている。しかし、カジノは民間が金儲けをするものである。なぜ賭博罪が成立しないのか、説明がつかないのである。
 担当者は、日本にはカジノについてのノウハウがないので、ラスベガスなどの外資系が経営者としてやってくるだろうと言う。ラスベガスでカジノを運営するラスベガス・サンズの経営者は、トランプ大統領の強力な支援者であり、多額の寄付をしている。安倍総理が訪米したときに、トランプ大統領との朝食会に、カジノの経営者三人が参加している。外資系の金儲けのためのバクチ解禁法なのである。
 観光振興といわれているが、行く人の七割から八割は日本人であると試算されている。日本人から金を吸い上げて、外資系にお金を流すという仕組みにほかならない。
 弁護士としても、たくさんのギャンブル依存症の人に会ってきた。本人も辛いのである。離婚に追い込まれたり、家族が崩壊したり、多重債務者となって、自殺に追い込まれたりする。バクチ法は、間違いなくギャンブル依存症を増やすものである。政治は人を幸せにするためにある。不幸な人を法律で作ってどうするのだ。
 日本人の入場料は六〇〇〇円とする。しかし、これでギャンブル依存症を防ぐことができるだろうか。また、一週間に三回、一回は二四時間と制限し、ギャンブル依存症を防ぐといわれている。しかし、たとえば、昼間の一二時に入って次の日の一二時までいる(二四時間の範囲内であれば、何度でも出入り自由である)とすると、何と一週間のうち六日間、バクチ場に行くことが可能である。これでは十分にギャンブル依存症ではないか。
 カジノ事業者は利用者にお金を貸すことができる。貸金業法では、年収の三分の一までしか貸すことができない。しかし、バクチ法では、このような制限はなく、事業者はバクチをする人に金を貸すことができる。バクチ場で借金を重ね、ほんとうに身ぐるみはがされて、無一文になるということもありうる。
 会期を三二日間延長してまで、なぜ強行成立させなければならなかったのか。
 IR事業場を三つまでつくることになっている。しかし、七年後の見直しで、これまた法律を改正すれば、どんどん増やすことができる。担当者に、いまどんなところが動いているかを聞いた。北海道の苫小牧と釧路など、横浜、愛知、大阪、和歌山、長崎などということであった。バクチ場ができれば、その町はほんとうに変わってしまうだろう。
 バクチによる粗利の一五%が国へ、そして一五%が自治体に入る。そして、七割が外資系の経営者に入ることになる。公共事業やこの収入などに自治体が惹かれている面がある。しかし、原発と一緒で、一時期儲けがあるように思えても、長期的にみれば地域は衰退していく。世論調査でも反対が多い。バクチは何も付加価値を生まない。単に人々からお金を吸い上げるだけである。これが成長戦略なんて、ほんとうにおかしい。
 国会では、外資系や多国籍企業のための法律が上から降ってきて、ゴリ押しされることが続いている。TPP、種子法廃止法、このカジノ法、そして、継続審議になった水道法改悪法案である。水道施設の所有権は自治体だが、管理運営権を民間に渡すコンセッションが盛り込まれている。水道の民営化である。外国では、水道料金がはね上がり、パリをはじめとして再公営化になっている。
 だれのための政治なのか。「バクチ場はわが町にいらない」「バクチ場は全国どこにもいらない」の声をあげていこう。




「福島みずほの人権いろいろ」index


HOME


JINKEN BOOKは、(株)解放出版社が提供しています。 無断転載を禁じます 。
Copyright (C)Buraku Liberation Publishing House Co.,ltd 2001, All Rights Reserved


E-mail

(株)解放出版社
Phone:06-6581-8542(代表) Fax:06-6581-8552
東京事務所: Phone:03-5213-4771(営業) FAX:03-5213-4777