福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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憲法改悪の発議を止めよう

『部落解放』2018年11月号

 

 自民党総裁選で、安倍総理が三選された。二〇二一年九月まで総裁を務めることになった。安倍総理は、一〇月下旬に開かれる臨時国会に自民党の憲法改正案を提出すると言っている。また、安倍総理は、二〇二〇年までに憲法九条を変えて施行すると言っている。ということは、二〇一九年までに憲法九条を変えようとしているのである。
 憲法九条に自衛隊を明記すると言っているが、これは何なのか。二〇一七年一一月三〇日、参議院の予算委員会で、私は安倍総理に質問をした。「明記する自衛隊の自衛権のなかに集団的自衛権の行使は含まれるか」と聞いた。総理の答弁は「九条一項二項の解釈を変えて限定的に集団的自衛権の行使を認めた。そのままです」というものだった。つまり、自衛隊の明記は、災害救助の自衛隊でも国土防衛のための自衛隊でもない。集団的自衛権を行使する自衛隊の明記のことである。集団的自衛権の行使とは何か。自分の国が攻められていないのに、他国で、米軍や多国籍軍とともに戦争をすることである。まさに集団的戦争権。
 二〇一五年の安保関連法・戦争法の成立によって、安倍総理が自衛隊の役割を根本的に変えてしまった。それまでの自民党は、集団的自衛権の行使は憲法違反であり、集団的自衛権の行使を認めるためには憲法を変えなければならないとしてきた。あの中曽根さんも、あの小泉さんも、そう言ってきた。安倍総理以前に、集団的自衛権の行使が合憲であると言った総理も官僚もいないのである。
 自衛権のなかに集団的自衛権の行使が入っているというのがミソである。戦争しない国から、戦争する国へ変える憲法改悪である。
 日本の若者が戦争の被害者にも加害者にもならないということを、戦後の七三年間、実現しようと努力してきた。世界で武力行使をすることができないというのが憲法九条の規範だった。それを壊したのが安倍総理である。解釈改憲から明文改憲へ。戦争のできる国の総仕上げとして憲法九条を変えようとしている。九条三項に自衛隊を明記することは、戦争をしないと決めた憲法九条一項二項の完全破壊である。憲法の規範が叩き殺されてしまう。
 憲法なんて、六法全書のなかに書いてあるだけだと言う人もいるかもしれない。しかし、それは違う。憲法の規範は戦後の政治を大きく規制してきた。憲法九条のもとで、防衛予算の抑制、非核三原則、海外に武器を売らない、そしてなによりも海外で戦争をしないということが積み上げられてきた。
 現在、防衛予算はうなぎ上りである。来年度の防衛予算の概算要求は約五兆三〇〇〇億円で、過去最高を更新した。アメリカから買う武器の総額が六九一七億円。二〇一八年度の予算が約五〇〇〇億円なので、いっきょに二〇〇〇億円上昇している。地元の反対があるにもかかわらず、イージス・アショア二三五二億円を計上している。
 憲法九条を変えれば、防衛予算はさらにうなぎ上りに上昇していくことだろう。軍需産業やとりわけアメリカの軍事産業が大儲けをしていく。しかし、その分、社会保障費が切り捨てられつづけるだろう。「青年よ、銃をとるな」と言ったのは社会党の鈴木茂三郎さんである。犠牲になっていい命など、どこにも存在しない。
 現在、衆議院と参議院で、改憲勢力が、残念ながら三分の二以上を占めている。来年の参議院選挙で、何としても憲法改悪の発議を止めるために、安倍改憲に反対する勢力が三分の一以上を獲得しなければならない。だとすると、安倍総理は、改憲論者が衆議院と参議院で三分の二以上を占めているときに、つまり来年七月の参議院選挙より前に憲法改悪の発議をして、参議院選挙と同日、あるいはそれ以前に国民投票をしようとするのではないか。そもそも国民投票をするのに必要な予算は八五二億円もする。また、憲法改正のための国民投票法は欠陥法である。国民投票の二週間前までテレビコマーシャルなどまったく自由なのである。
 憲法改悪の発議をとにかく止めたい。さまざまな場所で話をし、みんなの民主主義で止めていきたいものである。世界のどこにも戦争はいらない。




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