福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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少数者の人権問題

『部落解放』2019年3月号

 

 去年、アメリカの国会議員の選挙で民主党が躍進した。そのなかでとりわけ、先住民族の女性、黒人の女性、イスラムの女性などが国会議員になり、躍進した。これを見て、映画「シェイプ・オブ・ウォーター」だと思った。「シェイプ・オブ・ウォーター」は、アカデミー賞を受賞した作品である。このなかで、ほんとうにがんばるのが、話すことができない女性と黒人の女性である。アメリカのなかで、まさに女性であるということと、もうひとつの別の要因で、二重の差別を受けてきた、つまり複合差別を受けてきた女性たちがいままさにがんばり、輝いている。
 女性差別撤廃委員会は、日本政府に対して、複合差別についての実態調査をするように、対策をとるように何度も勧告している。そのことを受けて、私が男女共同参画担当大臣だったときに、第三次男女共同参画基本計画のなかに複合差別について盛り込んだ。二〇一六年には部落差別解消推進法が成立し、六条は部落差別の実態に係る調査を規定している。そのことをふまえ、複合差別について、女性であり部落差別を受けるという立場の調査が進むことをほんとうに期待している。
 いままで、部落差別と女性差別を受ける女性、障害者差別と女性差別を受ける女性、外国人差別と女性差別を受ける女性、アイヌ差別と女性差別を受ける女性などで、複合差別の問題に関して要望書を提出し、行政交渉をしてきた。まだまだ行政の理解は足りないと考えている。当事者たちは、実態調査をし、報告書も出し、本も作った。たとえば、識字率は女性のほうが低いことや、中・高・大学の進学率も女性のほうが低いことや、さまざまな問題が出てきている。障害をもつ女性たちが障害をもつ女性たちの差別について調査をし、一冊の本にまとめた。「障害があるのに結婚なんかできるのか」「障害があるのに子どもを育てることができるのか」など、いまだに大変な差別にさらされているという実態が明らかになった。また、性暴力の被害も受けやすいということも明らかになった。まさにそのことの延長線上に、一九九六年まで優生保護法があった。子どもを産んではいけない、子どもを育てられないという差別と偏見のもとで、男性もだが多くの女性が強制不妊手術を受けさせられたのである。現在、そのことについて謝罪し、給付金を支払うという議員立法を超党派で作成中である。
 ところで、討論をしていて、沖縄に対する弾圧を問題にしたところ、「国民のなかで沖縄の問題はプライオリティ(優先順位)が高くない」と言われ、ほんとうに驚いた。もし高くないとしたら、なぜなのか。そのことそのものが差別なのではないか。差別を受け、周辺領域の問題とされていることこそ問題ではないか。
 少数者の人権問題といわれていることは、たしかに、人々のなかで優先順位が高くないかもしれない。死刑、えん罪、被告人や受刑者、外国人、難民、障害者、部落差別、アイヌ、LGBTといわれる性的マイノリティの人たち、そして、女性などもそうである。女性は人口の半分いるけれども、女性問題の優先順位は高くなかった。だからこそ、ジェンダーの主流化、女性問題を主流化するために、たくさんの人たちが力を合わせているのである。セクシュアルハラスメントも、可視化し問題にしてきたから、少しずつ認識されてきたのである。優先順位が低いと言い切ってしまったら、何も進まない。みんなの問題にしていくことこそ求められている。
 そして、少数者の人権問題で思うことがある。わたしは、名前を変えたくなかったので結婚届を出さず、夫婦別姓である。二〇代のときは、とりわけ「なぜ」と聞かれた。「そうしたいからそうなのだ」と言いたいが、人に説明するのがけっこう大変だった。社会のなかで「なぜ結婚しないの?」「なぜ子どもを産まないの?」「なぜ同性愛なの?」などとは聞かれるが、「なぜ結婚するの?」「なぜ子どもをもつの?」「なぜ異性愛なの?」などとは聞かれない。少数者の生き方をとるときは、常に問いかけられる。挙証責任を課せられる。理解がない、知らない人に対して発言し、理解してもらうことは大変である。ましてや、言いたくない人や傷つく人もたくさんいる。少数者、マイノリティといわれる人たちの人権がみんなの人権とつながっていること、マイノリティといわれる人たちがそのままで尊重され、生きられる社会をつくりたいものだ。




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