福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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たかがドローン、されどドローン

『部落解放』2019年7月号

 

 国会でドローン飛行禁止法改正案が成立した。
 「ドローン」とは何か。一般的には遠隔操縦や自律式の無人航空機を指す。送信機やスマホで操縦できるラジコンヘリというところだろうか。工場などで、屋根などの修理すべきところを発見するのに、はしごなどで高い場所に登り、いちいち目視し、チェックすることは、安全上も手間暇も大変である。しかし、ドローンを飛ばしてリアルに見ることによって、修理箇所を特定することができる。北海道では、広範囲に農薬を散布するのにドローンが使われている。また、宅配便を送るなど、産業化、営業化も考えられている。
 今回の改正で、ドローン飛行禁止の範囲をきわめて拡大し、飛行禁止場所にいわゆるレッドゾーンとして対象施設を定め、防衛関係施設の自衛隊の施設と在日米軍の施設・区域を加えるものである。自衛隊施設二四〇五カ所、約一一億平方メートル、米軍施設・区域一三一カ所、陸域のみでも約一〇億平方メートルが対象となる。さらに、空域、水域まで広範囲に及ぶ。これだけでなく、その周囲三〇〇メートルをイエローゾーンとして指定するもので、ここを例外なく飛行禁止にする。大問題である。
 二〇一六年、高江ヘリパッド建設反対で、高江のテントなどにいた。高江の森がどうなっているのか知りたかったが、米軍基地の中なので、米軍の許可がなければ中に入れない。結局、米軍から許可が出なかった。高江の建設用地がどうなっているのか、木がどのように切られているのか、そのことを知ることができたのはドローンが撮影した映像のおかげである。
 名護市の辺野古新基地建設現場は、米軍キャンプ・シュワブと周辺の提供水域に囲まれ、ドローンは近寄ることができなくなる。建設現場では、条例に反して赤土が流出している。K4護岸付近から汚水が漏れ出している様子を市民団体はドローン撮影で確認している。ドローン撮影によって、基地建設による環境破壊などの実態を私たちは知ることができた。しかし、これから実態を知ることができなくなる。
 沖縄タイムスにこういう例が紹介されている。二〇一三年八月五日、宜野座村に米軍ヘリが墜落した。キャンプ・ハンセン内、村民の飲料水を供給するダムの方角だった。ダム管理者には通行許可証と鍵があり、日ごろは自由に出入りできたが、このときは米兵が立ちふさがり、現場に行くことが一切できなかった。テレビのヘリ空撮映像によって、墜落現場がダムからわずか数十メートルであり、しかもダムより高い場所にあることがわかった。有害物質がダムに流れ落ちることを懸念し、その日のうちに出水を止めた。米軍が現場立ち入りを認め、村側が安全を確認して出水を再開するまでに一年以上かかった。この映像がなければ一切わからなかったのである。映像がなければ、国民の命や健康を守ることができないのである。
 米軍や自衛隊の許可があれば、ドローン撮影ができることになっている。しかし、米軍や自衛隊は撮影を許可するだろうか。
 法律の目的には、防衛するための基盤の維持ということが追加されている。これは戦前猛威を振るった要塞地帯法の再来なのではないか。要塞地帯法は、要塞とその周りの地域を指定し、許可なき写真撮影などを禁止し、処罰していた。「この世界の片隅に」というアニメーションがある。港でスケッチをしていたら、この要塞地帯法に触れるとして警察に引っ張られていくシーンがある。戦前は、軍事機密が大事という理由で要塞地帯法を作り、人々を縛っていた。今回のドローン飛行禁止法改正法は、その要塞地帯法とどこが違うのだろうか。
 二〇〇四年、沖縄国際大学に米軍ヘリが激突して墜落した。これは米軍基地から二〇〇メートルである。基地の周りは、学校、保育園、大学、さまざまな施設が建設されている。沖縄国際大学に米軍ヘリが激突したときも、名護市沖で米軍オスプレイが墜落したときも、米軍が綱を張り、沖縄県警も国会議員もメディアも接近することができなかった。報道の自由や知る権利は保障されなかったのである。事故や事件があったときに真っ先に事実を知り、報道することが大事である。一刻も猶予はできないのに、ドローン撮影の許可を申請し、その回答で待たされる。さらに許可が出ないとなったときには、真実は報道されなくなる。ドローン飛行禁止法改正法は、ドローン目隠し法である。米軍基地ブラックボックス化法ともいえる。知る権利を守れといいたい。




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