福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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フラワーデモに参加して

〈『部落解放』2019年8月号〉

 

 先日、フラワーデモに参加した。三〇〇人以上参加していただろうか。東京駅近くで開かれて、多くの女性たちが、自分の思いをマイクを握って語った。いままで受けた性暴力のこと、だれにも言えなかったこと、人間不信、男性不信になったこと、話をしてもなかなか理解してもらえないこと、性暴力の裁判で立て続けに無罪判決が相次いでいること、同意がないことを裁判所は認めながらなぜ無罪になるのかなどなど、初めて話をするという人もいた。私の友人は「友達が話を始めてびっくりした。知らなかった」と語っていた。温かい時間と空間。温かい時間と空間だったからこそ性暴力について語ることができて、みんながそれを受け止めることができたのだろう。
 ほんとうにこれからだ。
 二五年前に『裁判の女性学』という本を有斐閣から出した。裁判で結婚はどう裁かれているか、未婚の母はどう裁かれているか、労働事件でどう裁かれているか、そして、性暴力が争われた裁判でどう裁かれているかなどを実際の裁判で分析、検証したものである。もちろん、裁判はさまざまであるが、セクシュアルハラスメントや強制性交罪(当時は強姦罪と言った)の判決を読んでいくと、裁かれているのは被告人ではなく女性の側ではないかと思った。逃げられたのではないか、なぜセクシュアルハラスメントにあったあと、職場でお弁当を食べているのかと問い詰められたり、女性の法廷での言葉使いが上品でないことが問題になったりしていた。いや、あまりに怖いと金縛りになって大声を出したりできなくなったり、すぐ被害を言うことが困難だったりするのだということが理解されていない。強制性交罪が成立するためには暴行・脅迫が要件とされている。抗拒が著しく困難になるような暴行・脅迫と解されている。ただ、あまりに抵抗することも怖いのである。私たちは、小さいときから、「騒がれたから首を絞めて殺した」などの供述を新聞などで読んでいる。うんと抵抗して殺されることは怖いのである。電車のなかで痴漢にあって、大きな声で「痴漢です。やめてください」と言うことも実際はしにくい。恥ずかしいということもあるし、人違いだったらどうしようとか、反撃されて刺されたり、電車から降りろと言われて逆襲されることも怖いのである。
 性暴力が言いにくいことや、その恐怖心や構造をほんとうに裁判官、そして、社会のなかで理解してもらわなければならない。
 ところで、そのフラワーデモで感動したのは、加害者に対する恨みつらみだけではなくて、その加害者も私たちがこの社会でつくっているという発言が相次いだことである。加害者をどうやってなくしていくのかということを被害者の人たちが語り合うというのは、とても感動的なことだった。
 加害者、とりわけ子どもに対して虐待をしたり、妻に対して暴力を振るったり、会社のなかでセクシュアルハラスメントをしたり、性暴力をする人は、いったいどこでその考えや行動を身に着けたのだろうか。その加害者自身も、もしかしたら過去、虐待を受けていて、人を支配するには暴力を使うものだと意識的、無意識的に思っているのかもしれない。それが「男らしさ」だと思っているのかもしれない。差別意識をもち、「女・子ども」には何をしてもいいと思っているのかもしれない。この社会からそのような考え方をなくし、加害者をどうなくしていくのか、そのことにいま私たちは向かっている。
 学校は勉強するところだけれども、子どもたちの命を守り、尊厳を教える場所になってほしい。今回、親の体罰は法律で禁止された。子どもたちに、だれからの体罰も許されないこと、自分は尊厳あるものとして扱われてよいのだということを教える必要がある。また、困ったことがあれば、児童相談所や子どもシェルターや女性に対する暴力のワンストップセンターなどがあることを子どもたちに教える必要がある。そして、もちろん親に対する支援も必要である。予算や人員を、子どもに対するすべての暴力をなくすことにかなりさくべきである。
 暴力や虐待を受けずに子どもたちが育つ社会をつくることができれば、この社会は変わる。もしすべての子どもが幸せな子ども時代を送ることができたら、この社会は変わる。そのためにやれることはすべてやっていこう。




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