福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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日韓関係、互いに知恵を絞り合おう

〈『部落解放』2019年10月号〉

 

 日本と韓国の関係が険悪になっている。日本も韓国も貿易立国でありながら、今回のことで輸出を含めた貿易に甚大な被害が発生している。インバウンドと言って観光客を増やそうとしてきて、観光客によってもホテルや飲食店、店などが大いに潤ってきたのに、それもなくなりつつある。日本と韓国の間での姉妹都市の交流や民間の交流も冷えていっている。政治的にも経済的にも社会的にも人々の交流という点でも、著しくマイナスである。改善が大至急必要である。
 安保関連法・戦争法が審議されているときには、中国の軍拡、北朝鮮の脅威が語られた。その後も時々Jアラートが鳴り響き、イージス・アショア建設が語られた。しかし、いまはどうだろう。韓国に対する批判、バッシングがきわめて強くなっている。「近隣諸国との緊張激化」「安全保障環境の変化」を理由に防衛予算はうなぎ登り、毎年、過去最高を更新しつづけている。
 外交の力で改善するつもりがあるのだろうか。ヘイトスピーチ解消法が三年前に成立したが、政府や政治が関係改善のために努力をしない、問答無用という態度でいいのだろうか。愛知県で開かれている「あいちトリエンナーレ」における「表現の不自由展・その後」の中止も地続きの問題である。
 二〇〇四年、広島高等裁判所は、西松建設を相手に訴えた中国の徴用工の事件に関して一人につき五五〇万円の支払いを命じた。「外国人の加害行為によって被害を受けた者が個人として加害者に対して有する損害賠償請求権は固有の権利であって、その属する国家が他の国家との間に締結した条約をもって放棄させることは原則としてできず、日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明第五項は、そこに明記されていない同国国民個人の有する損害賠償請求権の放棄までも含むものではない」として、日中共同宣言によっても原告らの請求権は放棄されていないと判断したのである。
 この広島高裁判決は、今回の韓国大法院判決の多数意見にそっくりである。そして、この判決が言い渡されたときに、これを国際法上あり得ない判決であるとする、現在安倍政権が韓国大法院判決に対して言っているような意見はあまり聞かれなかった。
 この事件については、二〇〇七年四月二七日、最高裁判所は、元徴用工らの請求権は日中共同声明五項によって裁判上請求することができなくなったが、請求権は消滅していないとして、関係者に被害救済に向けた努力をすることを期待し、和解解決を強く示唆した。西松建設は謝罪し、和解金を支払った。
 このとき、政治的に問題になるということはとりわけなかったと思う。
 かたや日中共同宣言であり、かたや日韓条約である。しかし、基本的構造は同じように考えられる。
 中国人の元徴用工の問題については、三菱マテリアル、日本鋼管、西松建設などの企業が和解をして、支払っており、そのことはとりたてて政治的にも社会的にも問題とされていなかったと思う。また、広島高裁は五五〇万円払えと判決を出しているのである。
 広島高裁判決と最高裁判決は、原告たちの損害賠償請求権が存在するということにおいては争いがない。ややこしいが、最高裁は、請求を斥けつつ、権利は消滅していないとして、企業による自発的解決を促しているのである。
 なぜいまの安倍政権は、企業による自発的解決を励まし、促進しないのか。
 「韓国けしからん、解決済みだ」ではなく、テーブルに着き、どのようにしたら解決できるか、お互いに知恵を絞り合うことが必要ではないだろうか。
 私は、せめて広島高裁判決、最高裁判決の立場に政治が立つだけでも、問題解決の糸口は見えてくると思う。
 それにしても、と思う。植民地支配をした側はもっと謙虚に歴史に向き合うべきではないか。徴用工の人たちの生活、人生を知ること、事実に向き合うことは、まだまだほんとうに不足している。
 ナショナリズムを煽られて私たちはどこへ行くのか。「反韓」を煽られて差別や排除を強めてどうするのか。人々は「敵」ではないはずだ。




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