福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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土井たか子さんを思う

〈『部落解放』2019年11月号〉

 

 土井たか子さんが亡くなられたのは二〇一四年九月二〇日。ちょうど五周忌ということで、神戸市で集会を開いた。懐かしの映像が流れ、これまた懐かしい特徴のある声が流れる。
 土井さんは、安保関連法・戦争法の強行成立を見ずして亡くなってしまった。いまこそ憲法を守り、生かさなければならない。いまこそ土井さんの志を継いでがんばろうという集会だった。
 雇用における男女平等を追求した。生活保護の受給にあたり女性と男性で必要な摂取カロリーが違うということで差が設けられていることが問題であるととりあげ、変えさせた。国籍法で、お父さんしか子どもに国籍を継承させることができず、お母さんは与えることができないいわゆる父系血統主義から父母血統主義への転換を実現させた。国際人権なんて言葉がないときから、国際人権の活動をされていたのである。公害被害の現場に行き、国会のなかで質問し、とりくんでいた。
 土井さんの志でまずいちばん継ぎたいものは、護憲である。憲法九条を改悪させない闘いはまさに正念場である。生活保護における女性差別の問題は憲法二五条の問題である。二五条は文化的な最低限度の生活を営む権利を規定している。憲法二四条は、家族のなかの個人の尊厳と両性の平等を規定している。この条項を入れるために努力したのは、ベアテ・シロタ・ゴードンさんであるが、ベアテさんと土井さんが社会文化会館のホールで対談をしたことがある。憲法二四条ができたために民法の家制度や男女不平等は廃止された。二人のゆったりとした対談は楽しいものだった。もうお二人とも亡くなってしまったが。
 第二に、社会民主主義である。「強きをくじき、弱きを助け」とよく土井さんは言っていた。「山が動いた」と土井さんが言ったときに問題になっていたのは消費税の導入。その消費税はこの一〇月一日から一〇パーセントに。輸出大企業は、消費税が一〇パーセントになろうが二〇パーセントになろうが、何も困らない。輸出戻し税というかたちで日本政府から還付金をもらうことができる。一〇パーセントになれば一〇パーセント分、二〇パーセントになれば二〇パーセント分還付してもらうので、何も困らないのである。でも、年金生活者、低収入の生活者など、多くの人は困るのである。サラリーマンの人も言う、実質賃金の目減りであると。そのとおりである。かつての映像のなかで土井さんは言う、「生活が政治につながっていない。そのことが問題だ」と。いま、まさに人々の暮らしと無縁のところで官邸主導で政治が行われている。消費税が上がった分、法人税や所得税の累進課税が下がり、帳消しになっている。公平な税制の実現こそやらなければならない。
 第三に、土井さんが二〇〇一年に発表した土井ドクトリンである。北東アジアにおける安全保障構想であり、北東アジアにおける非核化構想で、六カ国協議のもとになったものである。この間、米朝会談、朝鮮半島における南北会談などが行われており、この北東アジアにおいてどう平和を構築していくのか、まさにいまこの土井ドクトリンの北東アジアにおける平和構想を思い出している。
 土井さんは右往左往しない人で、そこが大好きだった。憲法九条を守り、生かそうと、国会のなかで仁王立ちになっていた。そこが好きだった。
 歌が上手で、一緒に入った神楽坂女性合唱団(初代団長は料理研究家の小林カツ代さん)では、よくソロで、さまざまな平和の歌などを歌っていた。私のパーティーなどでも「マイウェイ」などを朗々と歌ってくれた。宝塚の男役のような感じで、兵庫県出身の土井さんは宝塚を受験したことがあると聞いたことがある。本人に確認してはいないが、歌は本格的であった。土井さんのリサイタルショーをやろうと思っていたが、それはもうできない。
 そして、土井さんは勲章をもらわなかった。女性初の衆議院議長だったこともあり、勲章をもらわないかという打診はあったが、生前辞退しつづけ、死後ももらわなかった。そこもとても土井さんらしいと思っている。
 土井さんに口説かれなければ、私は議員にはならなかっただろう。そして、土井さんは実に多くの女性を励まし、応援しつづけてくれた。
 日本国憲法を守り、生かすことを多くの人と引き継ぎ、がんばりたい。




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