福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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コロナウイルスに思う

〈『部落解放』2020年5月号〉

 

 コロナウイルスが、日本で世界で広がっている。対策が必要であり、国会での議論もコロナ対策に多くの時間と労力が割かれている。
 さまざまなユニオンが労働相談をやっている。「経営者がコロナにかかるなと言う。かかったらクビだ。業界からも追放される。外出ができない」。ある島のホテルの従業員は「島から出るなと言われている。有休をとって帰省しようと思ったが、それもできなくなった」。多くの人が、コロナにかかったらどうしよう、かかったらみんなに迷惑がかかるし、心配だ、ちゃんと治療を受けることができるか、会社が倒産しそうだ、客が来ない、仕事がキャンセルされた、貯金がなくて生活ができない、将来が見通せないなどなど、不安を抱えている。
 ひとつは検査の数があまりに低すぎることがある。一万人に達していない。諸外国に比べてあまりに低い。症状のない感染者が人にウイルスを拡散している可能性があるのである。このことが爆発的な蔓延を引き起こすかもしれない。感染した人を隔離し、蔓延を防ぐ必要があるのに、そのことができていない。
 日本医師会は、新型コロナウイルスの感染が疑われる患者の検査について、医師からの依頼を保健所に拒否されるなど、不適切な事例が二九〇件あったことを明らかにした。検査態勢が整っていなかったことが要因との見方を示した。これが現実である。検査数を抑え、実情がわからなければ本当の対策など打てない。韓国のドライブスルーのやり方、あるいは中国が開発したCTで判定する方法など、参考にすべきではないだろうか。
 次に、政府の政策が場当たり的で振り回されるというのがある。学校の一斉休業を突然、総理が要請し、今度解除になった。何の事前準備もできず、現場は混乱した。
 世界のさまざまな国の状況を見るにつけ、その国が国民の命をどう思っているのか、情報開示と国民との信頼関係をどう築いているのか、その国のインフラや医療体制、貧富の問題などを痛感する。
 台湾は、封じ込めに成功した国といわれている。台湾が一二月末には、武漢からやってくる中国の旅客機のなかで乗客の健康確認などを行ったと報道されている。非常に早めに対応して、いわゆる水際作戦にかなり成功したのではないだろうか。また、マスクなどに関しても、インターネットを使ってどこで売られているかを明らかにし、一人ひとりにマスクが行き渡るように対策を打った。
 なぜイタリアであのように感染者が広がり、死者が増えているのだろうか。ひとつの理由となっていると考えられることに、イタリアで地域の病院が大幅に統合・廃止されたことを挙げる人もいる。病院、医師、医療従事者が圧倒的に足りず、医療にかかれない人たちが少なくないという。データで見ると、イタリアで個人の医療費は年々減っている。人工呼吸器などの数も足りないといわれている。
 日本も保健所の数が一九八〇年代の半分になっている。厚生労働省は、公立病院の統合・再編に関して病院のリストを出した。現在、感染症の問題に関してほんとうに公立病院はがんばっている。公立病院の統廃合・再編など、させてはならない。
 「誰一人取り残さない」社会をつくるには、命を支えるインフラが脆弱であってはいけない。新自由主義でさまざまなもの、水道さえも民営化し、公共サービスを削り、「自己責任」を国民に押し付ける政策を転換しなければ、大変なことになる。ウイルスは、老若男女、富める者も貧しい者も選ばない。ハリウッドスターのトム・ハンクスもノルウェー国王も感染した。しかし、治療や救済は、国によって、境遇によって、人によってまったく違ってくる。社会的に弱い者が置き去りにされたり、重篤化して亡くなるということが起きうるのである。
 コロナ問題はそれぞれの国が命をどう考えているのかをあぶりだした。だから正念場である。誰一人取り残さない、ほんとうにそんな社会になるよう、多くの人と力を合わせたい。




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