福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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別の豊かさと出会う

〈『部落解放』2020年8月号〉

 

 黒人男性のジョージ・フロイドさんが警察官に首を押さえられ亡くなった事件をきっかけに、アメリカをはじめ全世界で抗議のデモが行われている。日本でも「黒人の命は大切」というスローガンを掲げた集会やデモも行われた。
 アメリカでコロンブスなどの像が人々によって倒された。報道でしか知らないので、本当の理由はわからない。しかし、想像できることがある。中学校で英語を習ったときに、「コロンブス ディスカバード アメリカ(コロンブスがアメリカ大陸を発見した)」、そしてその受動態の「アメリカ ワズ ディスカバード バイ コロンブス(アメリカ大陸はコロンブスによって発見された)」という文をまず教わった。コロンブスがアメリカ大陸を発見した、アメリカ大陸はコロンブスによって発見された。英語の練習である。しかし、変である。コロンブスに発見される前からアメリカ大陸は存在し、人々が暮らしていたのである。マゼランは、南アメリカ大陸南端のマゼラン海峡を発見したといわれている。しかし、現地の人は大昔からその海峡を知っていたのではないか。
 南アフリカ共和国には、ダーバンで開かれた国連人種差別撤廃会議とヨハネスブルグで開かれた国連環境会議の二回訪れた。小学校を訪問したときに、子どもたちが歌声で迎えてくれたのはとてもうれしかった。そのとき、「暗黒大陸」といわれたアフリカの、それ以前の歴史を子どもたちに教えようとしていると学校の先生に聞いた。たしかに、「暗黒大陸」というのを世界史で習った。しかし、「暗黒大陸」といわれる以前にアフリカは、それぞれの地域で豊かな文化をもち、人々が暮らしていた。歴史や言葉一つとっても、征服した人たちの価値観や言葉によってつくられている。それを一つひとつ変えていくことが、大変だけれども必要だ。別の豊かさに出会う必要がある。
 子育て中にある女性と仲良くなった。近所に住む彼女は英語が堪能で、インド人と結婚し、小学生の女の子がいた。私も小さな娘がいたので仲良くなり、彼女の家でおしゃべりしながら食事をしたりした。彼女は、小学生の娘が肌の色が黒いので、学校で「くろちゃん」と言われることで悩んでいた。その後、彼女はアメリカの西海岸に引っ越した。彼女が一時帰国をしたときに法律事務所に電話をもらったりした。時々、彼女は、彼女の家族はどうしてるかなぁと思っている。彼女の大きな悩みは、日本の学校のなかで、娘が肌の色でいろいろ言われていることであった。
 そのことは基本的に変わっていないのではないか。私の友人たちに、アフリカ出身の人と結婚している人が何人もいる。子どもがいて、元気に子育てをしている。この日本の社会から差別を根絶しなければならない。
 インターネット上は、さまざまな差別の言説で溢れかえっている。在日韓国・朝鮮人に対する差別もあれば、女性差別もある。部落差別もある。性暴力を訴えた伊藤詩織さんや、#KuTooパンプスを履くことの苦痛を訴えた石川優実さんなど、若い女性たちはとりわけターゲットにされている。在日韓国人であることと女性であることの両方の差別から、より女性がターゲットになる複合差別が起きている。
 差別は人の心を傷つけ、力を奪っていく。差別的な言動をなくすことが重要であり、インターネットのなかの差別も許されてはならない。
 野党や与党のなかで、いまインターネットのなかの規制が議論されている。必要なことである。
 法律も大事だし、人権啓発も必要である。そして、政治のメッセージ、社会のメッセージも重要である。「黒人の命が大事」というデモに、カナダのトルドー首相は参加した。アメリカで起きたデモに対して、トランプ大統領は軍隊を出動させようとした。問題が起きたときに、社会の差別構造に思いを馳せ、どうすれば少しでも克服できるか、メッセージを発することも政治の大事な役割である。また、日本社会のなかの根深い、陰湿な差別をなくし、被害にあった人を救済しなければならない。そのためにも独立した人権救済機関が必要である。人権侵害は許さないとの明確なメッセージになる。




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