福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

「参議院議員・弁護士 福島みずほのWebsite」はこちら



 

難民制度の根本的な見直しを

〈『部落解放』2020年9月号〉

 

 秋の臨時国会に入管法改定案が出てくるのではないかと言われている。
 六月一五日、法務大臣の諮問機関である第七次出入国管理政策懇談会のもとに設置された「収容・送還に関する専門部会」が「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」を取りまとめ、六月二九日には第七次出入国管理政策懇談会でこの提言が正式採択され、法務大臣に提出された。今後、これにもとづき入管法改定案が作成される。この中身がきわめて問題である。
 提言の内容は、第一に送還忌避者に刑罰を科すこと、第二に二回目以降の難民認定申請を行った人の強制送還を可能にすること、第三に滞在許可のない者を収容する際に、事前の司法審査なしに無期限の収容が可能という現在の制度を維持することである。
 第一の送還忌避罪は、国に送り帰されることを拒否する者に対して退去命令を出し、これに従わない場合は送還忌避者として犯罪化するというものである。拒否する者には、難民もいる可能性がある。専門部会の提言には、反対意見があったことも記されている。難民認定申請者に対して、迫害の危険性がある出身国に渡航文書等の申請を行うよう命ずることは相当ではないという。そのとおりではないだろうか。また、罰則を創設すると弁護士や支援者、家族などが送還忌避罪の共犯とされる恐れがあり、活動を萎縮させてしまう。さらに、裁判を受ける権利までも侵害する。二〇一六年から二〇一八年までの間に終了した出入国在留管理関係訴訟後、国の敗訴が確定した判決は、二六件ある。裁判を受けさせずに出国させてしまうようなことになりかねない。
 自国にいられずに逃れてくるのが難民であって、これを保護するのは国としての責任である(難民条約三三条・ノンルフールマンの原則)。長年各国が取り組み、国際慣習法として確立された原則をねじ曲げてまで、送還忌避罪という新たな犯罪をつくるというのはありえない。しかし、ありえない法律もどんどんつくるのが政権である。臨時国会に提出されないようこれから大きく声を上げていきたい。
 国連難民高等弁務官事務所は、故郷を後にしなければならない難民・避難民は二〇一九年末で世界に七九五〇万人、全人類の一%としている。
 ところが、二〇一九年の日本における難民申請者数は一万〇三七五人である。それでは認定されたものはどれぐらいか。わずか四四人である。認定率〇・四%にすぎない。日本は難民条約に加入し、難民の受け入れが求められているが、あまりにあまりに少ない。トルコは二〇一八年は三七〇万人、ウガンダも一二〇万人と多く難民を受け入れ、人口四〇〇万人のレバノンはシリア難民を一〇〇万人受け入れている。
 二〇一六年につくられたドキュメンタリー映画「海は燃えている—イタリア最南端の小さな島—」を見たことがある。イタリア最南端の島ランペドゥーサ島にアフリカや中東から移民・難民が船にぎっしり乗って命からがらやってくる。島に押し寄せる難民の人たち。それを一二歳の少年サムエレの日常生活と絡めて描いている。人々を救おうとイタリアの政府も島の人たちもほんとうによく動いている。船で来た後、島で出産する女の人や、医師から治療を受ける人々も描かれている。人々は大変ななかで、とにかく受け入れるだけ受け入れて、何とか命を救おうとしている。
 それに比べて経済大国・日本の難民認定がわずか四四人なのである。何とかならないか。
 一九九八年一二月二四日、私は、牛久の入国管理局(当時)東日本入国管理センターにいた。青年から手紙をもらったのである。彼は、ミャンマーに帰れば迫害されるし、牛久のセンターに長期収容されていることも耐えがたいというなかで、憔悴し、思わず涙をハラハラと流した。渡辺彰吾弁護士らの努力により、裁判の途中で難民認定を受けた。彼はロヒンギャで、いまはミャンマーにおけるロヒンギャに対する人権侵害や弾圧などについて外務省などと交渉することを一緒に続けている。日本政府はいままで、クルド人に対してただの一人も難民認定をしていない。差別や弾圧はないという見解に立っているのである。イラン出身のある青年は、日本で同性愛であることをカミングアウトして暮らしていた。本国に強制送還されれば、処罰や迫害だけでなく死刑になる恐れもあり、難民認定申請をしたが認められなかった。結局、彼は日本を出国し、第三国で暮らすことになった。
 多文化共生が求められる時代に、日本の難民制度そのものを根本的に見直すことが必要である。




「福島みずほの人権いろいろ」index


HOME


JINKEN BOOKは、(株)解放出版社が提供しています。 無断転載を禁じます 。
Copyright (C)Buraku Liberation Publishing House Co.,ltd 2001, All Rights Reserved


E-mail

(株)解放出版社
Phone:06-6581-8542(代表) Fax:06-6581-8552
東京営業所: Phone:03-5213-4771(営業) FAX:03-3230-1600