福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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杉田議員の「女性は嘘をつく」発言

〈『部落解放』2020年12月号〉

 

 杉田水脈衆議院議員が、自民党の会合において、性暴力被害者支援をめぐり、「女性はいくらでも嘘をつけますから」との発言をしたと報じられた。杉田議員は、九月二六日のブログ記事においてこの発言を否定していたが、その後、発言を認めた。
 作家の北原みのりさんをはじめ多くの人たちがフラワーデモを始めた。これは、二〇一九年に連続して報道された性暴力無罪判決を契機に、毎月一一日に全国四七都道府県で性暴力の根絶と刑法改正を求めて行われてきたものである。性暴力被害者とその支援者たちが、性暴力の実態を語り、性暴力問題に対する社会の理解を求め活動している。東京駅の近くで行われるフラワーデモに何度も参加してきた。その場で初めて自分の性暴力被害を語る女性たちの話に耳を傾けてきた。
 私自身、弁護士としてセクシュアルハラスメントをはじめとした性暴力の事件や裁判にかかわってきた。『裁判の女性学』という本を作ったこともある。性暴力の判決を精査してみると、女性の服装や態度が問題にされていたりする。二五年ぐらい前のことだが、性暴力の裁判で裁かれているのは、加害者ではなくて、被害者である女性ではないか、と強く思った。強盗にあった人が、強盗にあった際の態度や服装や落ち度が問題にされるだろうか。しかし、性暴力事案においては被害者が、態度や服装や落ち度などさまざまな点を問題とされる。
 また、「あなたは嘘をついているのではないか」という疑いや憶測や非難にさらされる。子どもが実父からの性暴力を訴えれば、嘘をついているのではないかと言われ、女性が性暴力を訴えれば、同意があったのではないかと言われ、中高年になって、かつて受けた性暴力について語ったら、作り話ではないかと言われたりする。そもそも性暴力の被害が甚大であるという認識がまだまだ薄いことと、それを言うことの困難さに対する理解がないこと、さらに立場の弱い女性や子どもが信用されないというさまざまな困難に直面する。
 杉田議員の発言のあとのフラワーデモにも参加した。
 一〇代のころに性暴力被害にあった女性は、「杉田議員の発言は性暴力に苦しみながらも前を向こうとする人にとっては耐えがたい言葉です」と語った。実父からの性暴力被害を受けて、性暴力をなくそうと活動している山本潤さんは、「力のない人が黙らされ、性暴力はなかったことにされる。被害を信じてもらえなかった人を救える社会にしないといけない」と述べた。実父からレイプされた経験をもち、横浜でフラワーデモを主催する女性は、「被害を口にするのはとても屈辱的なことで、だれがあえて嘘をつくのか」と語った。
 社会のなかにはさまざまな立場があり、被害を受けた弱い立場の人間が語ることはきわめて困難である。とりわけ性暴力については、なぜ逃げなかったのか、なぜ抵抗しなかったのか、なぜそのとき声を上げなかったのか、等々間違った神話が存在している。逃げることが困難だったり、恐怖や驚きのあまり抵抗しにくかったり、そのことを語ることそのものが困難だったりするのである。これらに対する無理解や女性差別のなかで、多くの人が沈黙を強いられてきた。そして、それを語った途端に「女性は嘘をつく、あなたは嘘をついているんじゃないか」と言われたら、それはすさまじいセカンドレイプである。だれも信じてくれないなかで、あるいは女性のほうが強いバッシングを受けるなかで絶望し、止まってしまうか、あるいは自殺に追い込まれたりする女性まで存在する。
 「女性は嘘をつきますから」という発言は、女性が声を上げられないようにし、上げた女性を叩き、性暴力をないものにする。女性たちがようやく語りはじめたときに、このような発言はほんとうにひどい。しかもそれが国会議員から、政策をめぐってなされたこともきわめて大きい。杉田議員はかつて、LGBTなど性的少数者について「子供を作らない、つまり『生産性』がない」と月刊誌に寄稿し、問題になった。東京都足立区の区議会議員がLGBTに関して差別発言をし、問題になった。差別発言を繰り返すことで差別を助長し拡大していく。強く抗議し、変えていかなければならない。




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